授業力があってこそICT ネット接続環境に課題も

クラスで作ったスライドを見ながら合唱した
クラスで作ったスライドを見ながら合唱した

東京都文京区立茗台中学校(戸部範一校長、生徒数203人)は1月15日、研究発表会を開いた。研究主題は「タブレット端末を活用した思考力・判断力・表現力の育成~学習場面に応じたICTの活用により授業を変える」。公開授業や研究発表、講演会などを行った。

3年1組は、沖田郁主任教諭が音楽科の授業を公開。混声三部合唱「春風の中で」の歌詞について、イメージ画像をつないだスライドづくりを実施した。

前時までに、▽歌詞を11のフレーズに分割し、3人1組のグループで歌詞に合うイメージ画像を選び、パワーポイントでまとめる▽11フレーズをつなげた画像を全員で見て、イメージを検討する――などを終えていた。本時は、前時までに作成した画像を手直しし、クラス全員が納得できるスライドを作成。イメージを共有しながら合唱を行った。

ICT活用の目的は、歌詞に合う画像を通した、歌詞全体の印象の視覚的な共有。これにより、個々の表現力だけではなく、集団としての表現力も向上させるのが目標。

授業では、黒板にスライドを映しながら合唱した。前時までに作成したスライドはうまく流れたが、本時に手直しした後のスライドは、うまく流れずに終わった。たくさんの教室で同時にICT機器を使用したため、Wi-Fi回線がうまくつながらなかったのが原因だという。合唱自体は、表現のイメージが共有された素晴らしいものだったが、ICT教育にはこのような課題もあるのが明らかになった。

同校は、平成26・27年度、同区教委の教育研究協力校として研究を進めてきた。同区が策定した教育振興基本計画のもと、「タブレット端末を活用したICT教育モデル事業」のモデル校に選定されている。同モデル事業は、ICTの活用を通して、児童生徒が自ら進んで学び、基礎的な知識や技能に加え、課題解決に必要な思考力・判断力・表現力などを身に付けるのがねらい。

ICTを活用すれば、授業が変わる。同校では、今までに多くの取り組みをしてきた。バスケットボールのシュート場面を生徒同士で撮影し、その動画を確認しながらアドバイスを送り合ったり、画面に映した社会科の資料に書き込みをしながら発表したりするなど、生徒が議論と情報を共有した結果、深い学びを実現している。

講演会では、日本女子大学教職教育開発センター所長の吉崎静夫教授が、「ICTを活用した授業づくりと教育方法」について語った。「授業がしっかりしている教員がICTを利用し、うまくはまったときに効果が出る。授業力が足りない状態で、終始ICTだけを使って進めようとすると、空回りする」と指摘。ICT教育とはいえ、教員の授業力が最重要であると強調した。「ICTは人間関係の基盤があってはじめて成立する」と、ICTを活用する基礎には良好な人間関係が必須との示唆もあった。

同校では、同事業を進めるための有効なソフトウェアの1つとして、スプラッシュトップ㈱の「Splashtop」を導入。公開授業では、6クラス中、2クラスで活用されていた。

ソフトウェアの選定をした戸部校長は、「共同学習を重視して決めた」と決断のポイントを説明。「業者の選択をする際、5社から説明を受けた。個別学習を売りにするものが多いが、中学校は専門教諭が集まっているから、きちんと教科指導ができる。小学校ほどは個別のドリルを必要としない。重要なのは共同学習」と、中学校長ならではの視点を力説した。

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