小・中・高校の運動会や体育祭なで行われる組体操中にけがをする児童生生徒が、平成23年度以降4年連続で8千人以上に上ることが分かった。この中には、頭蓋骨や脊椎を骨折したり、内臓を損傷したりと重傷を負うケースもあった。こうした事態を受け、馳浩文科相は、運動会での組体操の中止について前向きな考えを示した。
千葉県松戸市立病院の庄古知久救命救急センター長が日本スポーツ振興センター(JSC)に公開請求した「災害共済給付制度届出データ」で明らかになった。
庄古医師は、組体操の危険性について「土台が崩れれば、上に乗った子も、土台になった子もけがをする。自力では回避できない」と警鐘を鳴らす。
26年度は8592人が負傷。この内訳をみると、骨折が全体の21.7%にあたる1866人。脊椎(頸椎、胸椎、腰椎)や骨盤、大腿骨などの「重症骨折」が4%(72人)を占めた。これに頭蓋骨骨折や脳挫傷、肺、腎臓などの損傷を加えた「重度損傷」が84件で全体の1%にあたる。さかのぼって25年度は8561人(重度損傷101人を含む)、24年度は8883人(同87人)といった具合。
馳文科相は2月5日の衆院予算委員会で、運動会での「組体操」の中止について「重大な関心をもって、文科省として取り組まねばならない」との認識を示した。
学校体育を所管しているスポーツ庁は「問題は認識している。以前から教委に注意喚起をしていた。さらなる対策を考えていきたい」と語る。
組体操の高さを制限する動きが各地に広がっている。
八尾市教委では昨年9月に、市立中学校の体育祭で組体操として披露した10段の立体型ピラミッドが崩れた。これにより、1年生が右腕を骨折し、5人が負傷した。
この事故をきっかけに、事故検証委員会を設置。児童生徒が四つんばいになって重なるピラミッドの高さを5段まで、肩の上に重なるタワーを3段までとする提言を検討している。この提言をもとに指針をつくり、今年度中に各学校に説明する見通し。
同市教委によると、平成15年度からの10年間で、36校139人が骨折していた。
大阪市教委も同様の段数制限を、昨年9月に導入した。同市教委の調べによると、市立の小・中高校446校中296校でピラミッド型の組体操を実施。このうち、6段以上は小学校が143校、中学校が28校。最大で9段の中学校が1校あった。高校では6段以上の高さは行っていなかった。