事件の再発防止に向け 校長が川崎中1殺害事件を語る

校長は声を絞り出しながら、この1年をふり返った
校長は声を絞り出しながら、この1年をふり返った

川崎市の多摩川河川敷で昨年2月、中学校1年生の上村遼太さん(当時13歳)が刺殺された。あの事件が、20日でちょうど1年となる。その日を前に、上村さんが通っていた中学校の校長が2月19日、現在の心境や在校生の様子、悲劇を繰り返さないために事件をきっかけに校内で強化した取り組みを語った。

校長は、「明日で1年になるが、あらためて事の重大さ、痛ましさを感じている。この1年間、地域や保護者から理解を得て、人権や人命を大切にする教育や、一人ひとりの心に寄り添う指導を充実させてきた。不登校生徒については、なるべく多くの情報を継続的に、関係者間で交換し、生徒理解に努めてきた」と語った。

事件後、この中学校では体制の強化策を検討。不登校に対する支援委員会を発足させた。「電話がつながらない」「家庭訪問で保護者と会えない」などの不登校生徒に関する情報を共有するほか、地域巡回もしている。来年度も、これを工夫し改善しながら継続していく方針でいる。

事件直後の在校生の様子については、「不安定さはごくわずかだったが、スクールカウンセラーを複数導入するなどして、落ち着きを取り戻した」とふり返る。現在については、「心を落ち着けている生徒がほとんど。ただ、公判があったし、報道も多いので、友人たちは心を痛めているのでは」と配慮した。「今週も毎日のようにスクールカウンセラーが来ているが、訪れる生徒はいないので、元気にやってくれているのでは」と、在校生への影響が少ない点を強調した。

この日は、全校生徒を集めて黙祷。上村くんの冥福を祈った。その後、校長が10分ほど話をした。1年前をふり返り、「長期欠席の生徒に対する初期対応や踏み込みが甘かった」と反省する校長は、在校生に「悩みや嫌なことがあったら、自分で抱え込まず、友達、先輩、家族、先生を信頼して相談してほしい。その方がうまくいく。先生たちも聴く体制を強化する。信頼して相談できるような関係をつくりたい」と語りかけたという。

事件直後は、あまりに残酷で現場に行けなかったと校長は話す。その後、8月と今月に、ひとりで現場に行ったという。「ここに彼が倒れていたとか、ナイフで何回刺されたとか、想像してしまうので苦しい」と述べた。

さきごろ行われた公判の判決内容に納得しているかについては、「被告が未成年であるし、校長という立場なので、コメントは控えたい」とした。

1年前、どうしたら上村くんを救えたと思うかの質問には、「『これ1つで』という特効薬はない。欠席が始まったり、部活を休みがちになったりなど、兆しが見えたときに個別の対応をする。そのときに、もう少し丁寧に踏み込めば、あるいは――」と漏らした。

最後に、「学校としてできることはやっていくが、不登校や犯罪の問題は、学校だけでは解決できない。地域や社会の影響を受けている」と言及。「起こってほしくないことが起きてしまい、私のあと何年かの教員生活の中で、真剣に向き合い、考えていくきっかけになった」と述べた。

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