がん教育推進で補助教材 外部講師の活用ガイドも

「がん教育推進のための教材」から
「がん教育推進のための教材」から

文科省はこのほど、学校におけるがん教育推進のための補助教材を作成した。あわせて、医師やがん経験者などの外部講師が、学校でがん教育を実施するにあたっての留意事項をまとめたガイドラインも公表した。

補助教材のタイトルは「がん教育推進のための教材」(A4判、18ページ)。がんに関する基礎知識や治療法、緩和ケアについて、写真や図を用いて解説。がん患者に対する理解を促す話し合いの活動案や、小学生用の教材案も収録されている。

同教材は、今年度の「がんの教育総合支援事業」モデル校で活用。その後、現場からの意見などを踏まえ、来年度に改訂を予定している。

ガイドラインの表題は「外部講師を用いたがん教育ガイドライン」(A4判、19ページ)。がんへの理解や正しい認識を深めるため、外部講師の活用が重要となるのを踏まえて作成。基本方針として、小学校では健康と命の大切さを育むこと、中学校・高校では科学的根拠に基づいた理解を、主なねらいとしている。企画から、打ち合わせ、実施、実施後の指導、評価までの各段階で、学校内での動きと関係者との調整が、表にまとめられている。

外部講師は、医療従事者、がん経験者などを想定。小児がんの当事者やがん遺児らへの配慮、取り扱う内容に関する注意点もまとめられている。

参考資料として、内容が扱われる学習指導要領の該当箇所を示した。

同省は「がんの教育総合支援事業」を平成26年度から実施。昨年3月には、学校でのがん教育の在り方について報告書を取りまとめている。学校教育全体の中でがん教育を推進し、正しい知識と理解のもとに、自らの健康を適切に管理し、がんの予防と早期発見につながる行動を促すのがねらい。

補助教材とガイドラインは同省サイト内で閲覧できる。

 

がん教育ではここに配慮

文科省が作成した「外部講師を用いたがん教育ガイドライン」から、「配慮が必要な事項」の要点を抜粋した。

◇  ◇  ◇

■配慮事項全般
がん教育の実施に当たっては、授業の実施前までに、次のような事例に該当する児童生徒の存在が把握できる場合はもとより、把握できない場合でも、授業を展開する上で配慮が求められる。

▽小児がんの当事者、小児がんにかかったことのある児童生徒がいる場合。

▽家族にがん患者がいる児童生徒や、家族をがんで亡くした児童生徒がいる場合。

▽生活習慣が主な原因とならないがんもあり、特に、これらのがん患者が身近にいる場合。

▽がんに限らず、重病・難病等にかかったことのある児童生徒や、家族に該当患者がいたり、家族を亡くしたりした児童生徒がいる場合。

■外部講師の話で配慮が必要な情報

▽「がんは不治の病」など科学的根拠に基づかない情報は不適切。

▽「がんは簡単に治せる」などの誤解を与える可能性のある情報も不適切。がんの種類や5年生存率などを丁寧に情報提供する。

■がん教育に必要な内容

児童生徒に対して指導する上では、発達段階を踏まえ、専門用語に偏らずに、誰にも分かりやすい言葉を用いる。

授業を実施する前に、教員との間で指導上の留意点を確認した上で、次のような内容について指導することが考えられる(例示)。

▽がんとは(がんの要因など)▽がんの種類とその経過▽日本のがんのり患状況など▽がんの予防▽がんの早期発見・がん検診▽がんの治療法▽がん治療における緩和ケア▽がん患者の「生活の質」▽がん患者への理解と共生

命あるかぎり、あたなに伝えたい

「がん教育推進のための教材」から、がん経験者の体験談を要約。

◇  ◇  ◇

Aさんの子Bくんは、幼稚園年少のとき、1カ月以上かぜが治らず発熱。医師から言われた。「白血病です。血液のがんです。治療で一時的によくなりますが、完全に治すのは難しいです」

Aさんは涙が止まらなかった。それからのつらい治療でBくんは、食欲がなくなり、かみの毛が抜け、口内炎がひどくなった。
病院には同年代の友達がたくさんいて、楽しく遊んだり勉強したりしているが、ある日突然いなくなってしまう。誰も「どうして?」と聞かない。

小1の5月、Bくんは天国に旅立った。最後まで苦しんだ。

それから十数年。Aさんにも胃がんが見つかった。娘はまだ小5。いろいろ考えた末、子どもにがんであるのを伝えずに入院した。

つらい抗がん剤治療。Aさんは、わが子もこんなにつらい経験をしていたのだと改めて感じた。だからこそ、どんなつらい治療にも弱音をはかなかった。

手術をし、いったんは治ったが、3年後に再び手術。さらに2年後に、別のがんが見つかり、また手術。それでもがんと立ち向かい、治った。

3度目のがんの直後、娘の通う高校で「3度のがん経験」を話す機会をもらった。それをきっかけに、学校で講演を始めた。

またがんになるかもしれない。そうでなくても、人間はいつか死ぬ。そんな中、残りの人生を自分が経験したことや感じたことを多くの人に伝えようと、Aさんは心に決めている。

Aさんは、自分ががんになったときに支えてもらった人への感謝の気持ちを忘れないで、1日1日を大切に今を生きている。講演の最後に必ずこう伝えている。

「平凡な日常は、実はとても幸せなことなのです。ご両親やお友達を大切にしましょうね」

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