生活困難世帯の子のむし歯 状況変える道筋を示唆

東京都足立区教委と国立成育医療研究センター研究所社会医学研究部が、同区立小学校1年生全員を対象に、生活困難な家庭環境と子どもの健康との関連性を調査・分析した。こうした大規模調査は全国初。

それによると、健康状態として重要と考えられるむし歯が5本以上ある子どもは、生活習慣など「変えていくことが可能な要因」との関連性が大きい傾向が見えてきた。同様の関連性は自己肯定感との間にも見られた。

調査は昨年7月に、7校で先行実施。その後、残りの63校で本格調査を行った。無記名で、保護者4291人から有効回答を得た。

分析に当たっては、(1)世帯年収300万円未満(2)生活必需品の非所有〈子どもの生活に必要と思われる物品を欠き、5万円以上の貯蓄がない〉(3)経済的理由から過去1年間にライフラインに関わる支払いができなかった経験がある――のどれか1つでも該当する世帯を「生活困難」にある状態と定義した。

こうした生活困難世帯と非生活困難世帯を比較したところ、子どもの歯みがき習慣や保護者による仕上げみがき、むし歯の本数などは、生活困難世帯に多い傾向があった。また生活困難世帯の方が、子どもに決まった就寝時間がない、運動習慣がない、テレビ視聴やコンピュータゲームの時間が長い、留守番頻度が多い、読書数が少ない傾向があった。夕食の孤食が多い、保護者は抑うつ傾向が高く幸福度が低いなども同様だった。

分析ではさらに、「媒介分析」の手法によって、生活困難と子どもの健康、朝食欠食、逆境を乗り越える力(自己肯定感、自己制御力など)との関連性を探った。

その中の子どもの健康については、生活困難が子どもの5本以上のむし歯に影響を与える寄与率は約15%だった。この寄与率のうち、生活困難から直接引き起こされている割合(直接的影響)は約40%だった。生活困難な状況はすぐには変えられないが、家庭環境や生活習慣など「変えていくことが可能な要因」もあり、そのような要因を経て引き起こされている割合(間接的影響)は約60%であるのが分かった。

間接的影響のうち、比較的割合が大きかった項目はインフルエンザワクチンの未接種13%、ジュースの摂取8%、歯みがき習慣・仕上げみがきなし6%。インフルエンザワクチンの接種は、保護者の子どもの健康に対する関心の指標ととらえられる。麻しん・風しんの予防接種は自己負担なしでできるが、その未接種率は、生活困難世帯が非生活困難世帯のおよそ2倍にもなる。

また生活困難が子どもの逆境を乗り越える力に与える寄与率も約15%だった。だがこちらは、直接的な影響はわずかに6%で、間接的な影響が94%もあった。間接的な影響の中で大きな割合を占めているのは保護者の抑うつ傾向11%、子どもの運動習慣8%、朝食欠食8%など。

これらの分析を受けて調査まとめの考察では、「子どもを取り巻く家庭環境や生活習慣を変えていくと、子どもの心身の健康を守り育て、生活困難の影響を軽減していけるのが分かった」と強調している。

同区では今後、子どもの成長過程の中で、いつ、どのような対策を講じていくべきかを明らかにするために、他学年でも同様の調査を行う予定だという。

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