教育の本質は実践科学 いま感性や深さをこそ問おう

教育への熱情をもって語り合った
教育への熱情をもって語り合った

共創型対話学習研究所(代表・多田孝志金沢学院大学教授、目白大学名誉教授)の第2回研究大会が8月27、28の両日、信州大学しなのき会館で開催された。教員、校長、研究者など、2日間で延べ90人ほどが参加。実践と理論の往還の中で、21世紀に生きる子どもたちに、真に育みたい感性や知性について、熱のこもった発表や話し合いが繰り広げられた。

初日の冒頭、「実践から理論へ」と題して提言した米澤利明横浜国立大学教授は、「学問研究として実践は、往々にして重く見られない傾向があった。だからわざわざ理論と実践の往還とか融合とかが求められている。教育の本質は実践科学。実践そのものからこそ、それに立脚して理論を構築していく必要がある。『教育の真実は事実として学習者を成長させることにある』と多田代表は述べている。教育における研究はこのための手段の1つ。研究のための研究ではない。なんのための研究か、研究者はその目的をもう一度問い直す必要がある」と話した。

このあと、「対話的実践・創作話『思いやりの山』による協働する組織構築の実際」をテーマに、横浜国立大学大学院で実践研究をしている垣崎授二横浜市立秋葉小学校校長が発表した。

毎週行われる朝会で同校長は、自ら創作した「思いやりの山」を児童に話した。山火事に際して仲間を助け、自らは谷底に落ちていったきつねの話。朝会の後、教員にも児童にも、物語の意味や続きを考える機運が高まった。やがてその高まりはPTAに広まり、紙芝居に結実。地域のFM局から、この創作話が音楽入りで放送された。

心を揺り動かす創作話が、児童も教員も地域も共に成長する起点となったと語った。

また「ESDと道徳教育」と題して話した小嶋祐伺郎奈良教育大学附属中学校教諭が、「ボーダーについて考えよう」をテーマにした実践を発表。身近なところにある障害学級を起点し、福島や沖縄、ホロコーストなどの話題に発展。生徒は学びが広がり、つながり、深まるたびに新たな問いを発するようになり、それを自分事として考え、他者の思いを受け止めるようになっていったという。それは、生徒の問いを基にした単元の創作ともなり、生徒が自らのアイデンティティを揺り動かし、それを再構築して営みとなっていったという。

2日目には、①アクティブ・ラーニング②チーム学校③コミュニティ・スクールの3視点について、教員の実践報告による話題提供が行われ、3グループに分かれて課題を検討。学びに没頭する授業づくりの工夫、専門性に基づくチーム体制の構築、授業改善に生きていく学校と地域の連携などが話し合われた。

多田代表は「教育はいま、真に大きな変換期にある。このときにこそ、深さを問おう。これまで知が優位だった教育の中で、感性の重みをしっかりと受け止め、生かしていこう。地球は人間のためだけにあるのではない。生命全てとの共創が大切。深く考える力が劣化しているいま、高い精神性と美意識、深い思索、深い響感力、深い対話力、あくなき探究心、祈りの心、美意識の世界を、本気になって求めていこう。『間』のもつ自己再組織化の時間を重視し、人を思う心を忘れてはいけない。全人的回復、感性的アプローチ、エコロジカルな視点、子どもが自得する学びを追究しよう」などと語り、参集者を勇気づけた。

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