教員の資質能力で鼎談 本紙論説委員

左から工藤氏、寺崎氏、細谷氏
左から工藤氏、寺崎氏、細谷氏

次期学習指導要領に向けた改訂に関する審議まとめが出され、パブリックコメントを経た後に、年内答申へと向かう。そんななかで、教員の資質能力について、教育新聞論説委員である工藤文三大阪体育大学教育学部教授・学部長、寺崎千秋(一財)教育調査研究所研究部長、細谷美明早稲田大学教育・総合科学学術院客員教授の三氏に語ってもらった(敬称略)。


工藤 教員に必要な資質能力の1つに、授業を計画・実施・改善していく力がある。年間指導計画や単元計画を常に見直したり、中堅教員となれば、カリキュラムを開発したりする力も求められる。授業改善といわれるが、内容、教材、方法のどこをどのように改善するのか、焦点を明確にした取り組みが重要である。授業づくりでいえば、高校では指導方法の工夫に課題がある。また「協働的な学び」に関しては、何となく「協働」との言葉が使われている。アクティブ・ラーニングも同様で、教師自身のなかで昇華されないまま使われているのではないか。

細谷 学習指導要領のまとめ案で中学校は、変わっている点は少ない。だから、教育現場では、何をしたらよいのかと戸惑っている。高校にいたっては、アクティブ・ラーニングの蓄積がそんなに多くはない。特に40歳代、50歳代では、アクティブ・ラーニングについての知見をもっている者は少ない。20歳代は抵抗なくアクティブ・ラーニングに対応できる。それは、彼らが子供時代に総合的な学習の時間で、経験済みだからだ。自分で課題を見つけて発表するのに慣れている。ただ、こうした学習方法には、形成的評価や個人内評価のような、子供の成長を見取り認め助言する学習評価が重要だ。しかし、こうした評価は時間や手間がかかる。今でも多忙を極める学校の現状を見ると、指導と評価の一体化が、絵に描いた餅になるのではないかと危惧している。

寺崎 管理職についていえば、管理者よりも経営者になる必要がある。公立学校は法律等と税金で存立している。学習指導要領等の目的を具現し、学校予算や人件費等を子供のためになるよう運営する。これらをもとに、いかに教育の質を高めるか、経営力が問われる。新学習指導要領は、これまでの教育からの大きな転換を求めている。これをどのように舵取りし、具現するかは、一重に、校長の学校経営力にかかっている。

細谷 次期学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」を打ち出した。これはつまり、地域が学校に入ってくるというイメージだ。平たくいえば、教育活動の一部を地域に任せるのを視野に入れて、校長は教育課程を編成していくとの意味だ。これを考慮すれば、校長は学校経営をする立場として、地域の実情を考えたカリキュラムデザイナーにならなければならない。ただ、審議まとめ案では、具体的な内容が書かれておらず、それが実現できるのか不安ではある。

工藤 校長のマネジメントの中には、教員を育てる役割がある。教員自身が、自分で成長していく環境を整える必要がある。校内研究や研修、授業改善で学校力をアップしながら、教員を鍛えていく。そして、校長は、教員の努力を評価したり、ときには課題を指摘したりするのも必要である。こうしたなかで、資質のある教員は自然と伸びていくと思う。

寺崎 教員の育成については、これからの時代に応じる授業力の更新はもちろんであるが、社会の変化のなかでの教育の重要性を認識する、人間性豊かで協働力にあふれる教員を、中長期的なスパンで育成していく必要がある。

〈訂正〉工藤文三論説委員の肩書に誤りがありました。正しくは「大阪体育大学教育学部教授・学部長」でした。(2016.12.21)
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