来年度要求や今後の施策 前川喜平文科事務次官に聞く

次期学習指導要領や高大接続など一連の教育改革が進められ、少子化の影響などを踏まえた教職員定数の改善が求められている。文科事務次官に就任した前川喜平氏に、平成29年度概算要求や今後の施策などについて聞いた。


 

n20160914%e5%89%8d%e5%b7%9d%e4%ba%8b%e5%8b%99%e6%ac%a1%e5%ae%98■研修の在り方を体系化

――事務方のトップに就任したが。

まずは来年度以降に向けた教職員定数をどう改善していくか考えないといけない。チーム学校の組織体制の整備も進めないといけない。その中でスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、部活動支援員など多様なスタッフが必要になる。それをどう配置し、どう教員を支援できるのかが大きな課題になっていくと思う。

――教員定数は。

義務標準法の改正案を次の通常国会に提出し、法律の裏付けがある形で安定した教職員定数を確保していきたい。そのため来年度の概算要求に教職員定数改善を含む「『次世代の学校』創生のための指導体制等」の推進に1兆5263億円を要求した。義務標準法の改正を視野に来年度からの10年間で、基礎定数、加配定数を含めて公立小・中学校等の教職員定数を2万9760人増員したい。その1年目にあたる来年度は3060人増と考えている。教職員の多忙化を解消するためにも、実現させないといけない。そのためには財務省と厳しい折衝をしなければならない。

――教員の資質能力向上の関連法案を臨時国会に提出すると思うが。

教育公務員特例法の改正案では、教員育成指標を各教委が設定し、これに基づく研修計画をつくってもらう。教員のライフステージに応じた研修の在り方を体系化する。あわせて10年経験者研修を見直す。教職10年の要件を外し、ミドルリーダー研修を行うようにする。夏休みに免許更新講習と10年研が重なる場合もあり、ほかに何もできなくなるとの現場の声もある。今夏の見直しでそうした事態を防げ、ある程度の負担軽減になると考えている。

また教員研修センターの改正では、今の(独)教員研修センターを「教職員支援機構」に名称を変える。研修だけでなく、教員の養成、採用を含めた教職員の資質向上全般にわたるナショナルセンターとする。このほか、教員育成協議会を各県に設置する。学校や教委と大学が構成メンバーとなっている。法案では、必ず入れるとはなっていないが、私立の学校も加入してもらいたい。学校現場と教員養成をする大学、研修をする教委が一体となって議論が広がっていくと思う。

■新しい言葉に振り回されないで

――学習指導要領改訂や高大接続などは。

アクティブ・ラーニングや「社会に開かれた教育課程」など目新しい言葉はあるが、大きな方向性は変わっていない。自ら学び、自ら考える柱は変わっていない。新しい言葉に惑わされないようにしてほしい。特に小・中学校では、今までやってきたことをさらに進めていってもらいたい。自ら学び自ら考える学習はこれまでもやっている。社会に開かれた教育課程には、今までやってきた体験学習やキャリア教育も盛り込み、学校の教育課程と外の世界とのつながりをいまよりも一層意識してカリキュラムをつくってもらいたい。カリキュラム・マネジメントの重要性が強調されているが、もともと、学校の教育課程は学校でつくるのが基本。それをもっと、学校として主体的に行ってほしいということだ。

「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の記述式導入については、高校や大学の現場に過度な負担を与えない形でやりたい。どういう記述式で、どういう形での入学者選抜を活用したらよいのか。そのあたりをにらみ合わせながら、最適解を見つけていきたい。

この高大接続は大学の個別入学者選抜の改革が本丸だと思っている。それをいかに工夫するか。お茶の水女子大学の「新フンボルト入試」のような入試を、各大学がどこまでできるかがポイント。本当の学ぶ力をどうやって評価していくのかが課題。何が公平・公正かも考え直さないといけない。知識をただ問う入試が本当に公平なのか。80点の合格者よりも79点の不合格者の方が学ぶ力があるかもしれない。入学者選抜での公平という観念を見直していく。そのためには各大学のアドミッションポリシーが重要になってくる。これによって入学者選別の方法をつくりあげていくのだから。それを文科省として支援していきたい。

――教職員に向けて一言。

自信をもって教育現場に立ってほしい。目新しい言葉に振り回されないでほしい。今までも自ら学び自ら考える子供を育ててきたのだから。教員も自ら学び自ら考える人になってほしい。自ら考えるのはたいへん大事。

アクティブ・ラーニングをどう実施していくか。社会に開かれた教育課程をどう進めていくか。こうしたことを教員が自ら考えてほしい。言葉に振り回されないでほしいとは、教員が自ら考えてほしい裏返しだ。

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