義務標準法改正で提言 自民の次世代部会が了承

主査を務める馳衆院議員が、「義務標準法の改正は不可欠だ」と訴えた(右)
主査を務める馳衆院議員が、「義務標準法の改正は不可欠だ」と訴えた(右)

教職員定数の在り方を検討している自民党の次世代の学校指導体制実現部会(主査・馳浩衆院議員)は11月16日、通級指導や外国人児童生徒に対応する教員を基礎定数化するために義務標準法の改正を柱にした提言「次世代の学校にふさわしい指導体制を実現~『義務標準法』の改正~」を大筋で了承した。文科、財務の両省に近く提出する見込み。

提言ではこのほか、教員の「質」にも言及。地方自治体が教員の任免・研修・配置を計画的に進める必要があるとした。政府の目玉政策である「働き方改革」を実現するためにも、教職員定数の拡充を求めた。

こうした自民の提言は、文科省が同法を改正し、10年間で、基礎・加配を含めて公立小・中学校の教職員定数を2万9760人増員する案と歩調をそろえた格好だ。

年末の予算折衝に向けて、自民や公明などの文教族と文科省が、教員定数の大幅削減案を出している財務省を説得できる材料をどこまで用意できるかが、今後のカギとなる。

自民党の同部会による提言の全文は、次の通り――。


「次世代の学校指導体制実現部会」提言

(主査:馳浩主査代理:上野通子、宮川典子、池田佳隆)

次世代の学校にふさわしい指導体制を実現~「義務標準法」の改正~

●義務標準法は、教職員定数の確保と適正配置を通じ、義務教育の機会均等と水準の向上に寄与。一方、学校現場の抱える課題の深刻化を踏まえ、加配定数が占める割合が増加。

●これまで加配により恒常的に行われ「根雪」化した定数については、次期通常国会で義務標準法の改正による基礎定数化が必要。

●特に、障害のある子供への通級指導については、希望しても指導を受けられない「通級待機」の問題が発生。外国にルーツがあり、日本語能力に課題のある子供も、全国の半数の自治体に存在するなど、国として責任ある対応が必要。これらについて、基礎定数化を通じた教職員定数の充実が必要。「一億総活躍社会」の実現にも資するもの。

●地方自治体が、見通しをもって教師の任免・研修・配置を計画的に進め、教師の「質」を継続的に高めるためには、「次世代の学校指導体制」を実現するための「計画」の策定が不可欠。

●日本の教育は、「知育・徳育・体育」をあわせた人間教育と、教師の長時間勤務を伴う献身的な努力により支えられてきた。日本の教育の良さを生かしつつ、教師の「働き方改革」を実現するためにも教職員定数の拡充が必要。その成果は、子供と向き合う時間の確保を通じ、学力格差の克服など、子供たちに還元されるもの。

 

1.基本的な考え方~義務標準法の改正による加配の基礎定数化~

○昭和33年に公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(義務標準法)が制定。教職員定数の確保と適正配置、国による財源保障を通じ、義務教育の機会均等と水準確保に寄与。

○学校現場を取り巻く課題が深刻化する中で、加配が占める割合は年々増加し、現在は約9%程度にまで増加。本来、「加配」は、各学校が抱える課題に応じて機動的に配置するためのものである一方、通級指導や外国人児童生徒等教育など恒常的な「加配」を前提として行われているものもあり、いわば「根雪」化している。

○こうした「根雪」化した加配については、義務標準法を改正することにより基礎定数化を行うことが必要

2.障害のある子供に対する「通級指導」

○「通級指導」とは、発達障害や、比較的軽度の聴覚・視覚などの障害のある子供たちが、ほとんどの授業を通常学級で受けながら、障害による学習上・生活上の困難を改善・克服するために受ける特別の指導のことであり、インクルーシブ教育の観点からも極めて重要。

○通級指導は平成5年に制度化され、当初は難聴・言語障害への対応が中心であった。その後、平成18年度に学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)の子供が対象に加わったこともあリ、通級指導を受ける子供の数はこの10年間で2.3倍となっている。

○通級指導の成果については、自尊感情の向上や社会的スキルの向上など多面的に効果を上げている事例が多数。一方、一人一人の障害の状態が異なることから、ペーパーテストの学力など一律の基準で評価することは適切ではない。

○一方、「通級指導」を希望しているものの受けることができない「通級待機」の問題も顕在化しており、担当する教員の定数を大幅に拡充することが必要

○通級指導を担当する教師の割合については地域間のバラ付きも指摘されている。その背景として、より多くの子供を受け入れるため、一人当たりの指導時間数を減らすことで対応するという弊害が生じている。これを解決するための一番の方法こそが基礎定数化であり、対象となる子供の数に応じて、一定割合で教師を配置することが必要である。こうした取組は、総じて「一億総活躍社会」の実現にも資するもの。

3.日本語能力に課題のある子供に対する指導

○入管法の改正による日系人の定住化や国際結婚の増加などを背景に、日本語に課題のある子供の数はこの10年で1.5倍になっている。また、日本語能力に課題がある子供の中には、日本生まれの子供や日本国籍を保有する子供などが増加している。

○こうした子供たちへの指導については、日本語と教科を統合した「授業」を担う教師(教員免許を保有)と、教師を補助する母語を話せる支援員の参加により、例えば、外国にルーツのある子供の割合が高い学校において、市独自の学力・学習状況調査の結果、外国にルーツのある子供を含む低学力層の学力が向上したなどの成果を上げている。

○一方、外国にルーツのある子供については、地域間の偏在があり、特に工場立地により便益を受けている場合、教育に係る費用は企業や地方自治体が負担すべきとの意見もある。
しかし、「義務教育の機会均等」を確保するのは国家の責務であり、地方自治体の財政力等によって左右されることがあってはならない

○また、企業の協力についても、実際に外国人労働者を雇用しているのは大企業ではなく、下請けや派遣を中心とする中小企業が多くを占める(事業所規摸では、30人未満が全体の約56%。500人以上は約4%)ことを十分に踏まえた対応が必要。

○今後、「働き方改革」の一環として、外国人労働者の受入れ拡大についての議論がなされる場合には、それに伴う子女の教育の問題についても政策的に対応することが不可欠。

4.「質」の向上につながる「次世代の学校指導体制」計画の策定

○教育の「質」を上げるためには、単に教師の数を増やすだけでは解決できず、教師一人一人の指導力の向上や、指導方法の工夫などが必要なのは当然。一方、教育の「質」を上げるために、教師の「数」なくしては、より良い指導方法に基づく教育も実現できない。また、教師の「質」を向上するための研修を受けるためには、授業を代替する教員が確保できなければ、目の前にいる子供たちの教育の質が確保できない

○教師の「質」の向上については、教育再生実行本部第4次提言(チーム学校部会)なども踏まえた「教育公務員特例法等の一部を改正する法律案」が、衆議院を通過し、現在参議院で審議中。この法案は、教師の任命権者たる教育委員会が、資質向上に関する指標と研修計画を定め、資質向上に係る新たな体制が構築することを目指すもの。

○この法案の衆議院の附帯決議にも、「昨年六月に『教育現場の実態に即した教職員定数の充実に関する件』を全会一致で決議したことを踏まえ、教職員定数の計画的拡充に努めること」とされており、重く受け止める必要がある。

〇一方、任命権者である地方自治体にとって、教職員定数が何人に配置されるのかが不安定なままでは、教育の「質」に直結する、教師の計画的な任用・免職、研修、配置もままならない。

○子供の数に応じて教師が配置される「基礎定数化」は、地方自治体の計画的・安定的な人事研修計画を支える手段。加えて、10年程度を見通した「次世代の学校指導体制」構築に向けた「計画」の策定こそが必要

5.教師が子供と向き合える指導体制の確立~「働き方改革」~

○日本の義務教育は、国際的にもトップレベルの水準を維持。その要因として、教科指導にとどまらず「知育・徳育・体育」をバランス良くはぐくむ日本型教育が挙げられる。こうした「強み」を継続させる必要がある一方、教師の勤務実態に関する国内外の調査からも、教師の長時間勤務の問題が深刻化。教師の献身的な努力の一方、子供と向き合う時間が不足している日本の教育の姿は、持続可能性を考えると大きな課題

○学校の教育現場が抱える課題が複雑化・困難化し、教師への負担が増大している中、全ての問題を教師のみで解決することは困難という意見もある。こうした点について、既に、学校全体の業務改善に加え、教師以外が代替できる業務について、チーム学校の推進による専門人材の活用など学校、家庭、地域の教育力の充実に向けた支援策を推進。

○一方、こうした取組を進めたとしても、教師に求められる役割は極めて大きい。グローバル化の進展や人工知能の飛躍的な進化などの変化を踏まえると、教育の在り方も「現状維持」の発想ではならない。これからの時代を生き抜く上での資質・能力を子供たちに身に付けさせるためには、いわゆる「アクティブ・ラーニング」の視点からの授業改善をはじめ、質の高い授業・個に応じた指導を一層進めることが不可欠。

そのための基盤整備としても、教職員定数の拡充が必要教師の「働き方改革」により、教師が誇りや情熱を失うことなく、その使命と職責を遂行できる環境を整え、子供と向き合う時間を十分に確保することができれば、その成果は、「質」の高い教育や教育格差の解消という形で、子供たちに還元

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