どう見る? 次期学習指導要領の答申案

工藤論説委員(右)と大森准教授
工藤論説委員(右)と大森准教授

12月16日の中教審初等中等教育分科会で示された次期学習指導要領の答申案について、教育新聞論説委員である工藤文三大阪体育大学教育学部教授・学部長と、大森直樹東京学芸大学准教授にコメントしてもらった。


“手引”としての性格を

工藤文三大阪体育大学教育学部教授・学部長(教育新聞論説委員)

「生きる力」の理念は平成10・11年改訂の学習指導要領から示された教育課程編成の基本的な考え方であるが、その後、平成20.21年の改訂では学力の3要素によって裏付けを与えられ、次期学習指導要領では、さらに教育課程の編成に構造的に埋め込まれることが意図されている。

このことを実現するために学習指導要領では目標、内容、方法、支援、評価が一体的に“学びの地図”として示される。また、教育課程全体を通じて目指す資質能力を育てるために、各教科の「見方・考え方」を明確にし、これらを実現するためにカリキュラム・マネジメントが強調されていることも特色である。

これまでの学習指導要領が取り扱うべき事項を基準として示す性格が強かったのに対して、改訂される学習指導要領は、資質能力を教育課程全体を通じて実現していく“手引”としての性格を持つことになる。

問題の多い教育課程プラン

大森直樹東京学芸大学准教授

問題の多い教育課程プランだ。これからの社会で必要な力を育てるため、次のことを同時に行おうとしている。

第一は、教科と内容の増設だ。2018年度から先行する道徳の教科化に加え、高学年の英語を教科化し、プログラミング教育を必修化している。

第二は、教育課程の力点を資質・能力の育成に特化させることだ。そのために次の断定をしている。

①求められている資質・能力は、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の「三つの柱」に集約できること。
②「3つの柱」は第一次安倍政権下で07年に学校教育法に盛られた教育目標の三要素とも共通していること。
③「三つの柱」を追求するため、全ての教科ほかの目標・内容・評価を改めなければならないことだ。

第三はアクティブ・ラーニングの視点から「主体的・対話的で深い学び」を求めることだ。これだけのことを目指すには、教える内容を絞ることが欠かせないが、文科相は「内容の削減を行うことはしない」と言い切っている。

学校はどうなるか。まず、既存の教育課程の大幅なつくりなおしが始まる。とくに目標と評価はすべて書き換えなければならない。高学年の週授業時数は現行から1時間増えて29時間となるが、これは五日制導入前の1989年と同じ時数だ。5日でこなすと一日平均、5・8時間になる。

「3つの柱」に埋め尽くされた息つく間もない授業の連続になりかねない。

〈訂正〉工藤文三論説委員の肩書に誤りがありました。正しくは「大阪体育大学教育学部教授・学部長」でした。(2016.12.21)
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