【新年特集 提言と実践】国語


次期学習指導要領が、今年3月に告示される。本紙は全連小と全日中の協力を得て、授業実践に先駆的に取り組む小・中学校をクローズアップした。また識者にも、各教科の課題など提言を寄稿してもらった。

国語は、多田孝志金沢学院大学文学部教授の提言と、岐阜県大垣市立赤坂中学校、岩手県盛岡市立城南小学校の実践を掲載する。

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金沢学院大学文学部教授 多田孝志

 

グローバル時代の対話力で 21世紀の「深い学び」を志向
グループ内で積極的な発言が増えた
グループ内で積極的な発言が増えた

次期学習指導要領に向けた答申が、昨年暮れに示された。その方向性については、すでに、教育課程部会、総則・評価特別部会が、「よりよい学校教育を通じて、よりよい社会を創るという目標を共有し、社会と連携・協働しながら、未来の創り手となるために必要な知識や力を育む『社会に開かれた教育課程』」(平成28年5月)の実現として示している。

これを受けて、教育課程部会国語ワーキンググループは、国語科で育成すべき資質・能力(案)として、「知識技能」では、▽言葉の働きや役割に関する理解▽言葉の特徴や決まりに関する理解と使い分け▽書写に関する知識・技能▽伝統的な言語文化に関する理解▽文章の種類に関する理解▽情報活用に関する知識技能――を示している。

「思考力・判断力・表現力等」に関わっては、▽創造的思考とそれを支える論理的思考の側面▽感情・情緒の側面▽他者とのコミュニケーションの側面▽考え方の形成・深化――を示している。

さらには、「学びに向かう力、人間性等」について、6項目にわたり提示している。

この稿では、大学において「国語」「国語科指導法」を担当してきた経験に加え、国際理解教育を専門としてきた立場から、21世紀の国語科教育の方向性について、「社会に開かれた教育課程」と「深い学び」を中心に、私見を記す。

国際理解教育と専門領域をひとつとする筆者は、中近東・中南米・北米に、6年余り滞在した。また国際会議に日本代表として参加し、世界各地を旅して、現地の人々と交流してきた。

その体験からいえるのは、「社会に開かれた教育課程」における「社会」とは、多様な文化・価値観の共存する多文化共生社会であると考えている。

国語ワーキンググループが、「学びに向かう力、人間性等」の項において提示した、「言語の持つ曖昧性や、表現による受け取り方の違い」「言葉を通じて積極的に人や社会と関わり、自己を表現し、他者の心と共感するなど互いの存在について理解を深め、尊重しようとする態度」は、多文化共生社会に対応した資質・能力の育成、ことにグローバル時代の対話力育成の必須の要件といえる。

グローバル時代の対話力とは、多様な他者との対話の回路を能動的に見いだし、相互理解の難しさや摩擦を乗り越えながら互いの差異を調整し、新たな解決策や智慧を共創できる対話力であろう。

国・民族レベルでの国際交渉、また庶民レベルでの利害損得を巡る、意見の相違や対立が日常的な世界の現実を直視するとき、そうした現実に対応できる対話力の育成も、国語科教育に期待されるのである。

こうしたグローバルな対話力は「深い学び」(deep learning)によってこそ育まれる。

深い学びの要諦は、

▽さまざまな見方や考え方、感じ方や体験を「むすびつけ」「組み合わせ」て、新たなものを生み出す。

▽従前の価値観や見方に固執せず、事物・事象を「新たな視点や発想」から捉え直す。

▽ひとつの結論にとどまらず、より深い知的世界を「追求/追究」していく。

▽さまざま情報、複数の考えから、最良と判断できる考えを「選択」する。

▽ものごとの本質を見抜く「直感力・洞察力」をもつ。

▽相手の立場や心情に響き合い、伝えたいことを推測・イメージする。

これらにあると考える。

論理性とともに感性(Sensibility)を重視し、「言葉を通して、自分のものの見方や考え方を深めるとともに、考えを伝え合うことで、集団の考えを発展させようとする態度」を希求する国語科教育が、深い学びにより、多文化共生社会の基本技能であるグローバル時代の対話力の育成を目指すことを期待したい。

(共創型対話学習研究所長)

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岩手県盛岡市立城南小学校

 

言葉の力実感し学び続ける 授業、評価、思考など系統立てる
グループ交流で思考を深め合う1年生
グループ交流で思考を深め合う1年生

本校、岩手県盛岡市立城南小学校では、「言葉の力を実感し、学び続ける子供」の育成に向け、国語科の学習で、以下の3点に焦点を当てて実践研究に取り組んでいる。

①課題意識を醸成する

課題意識は、学びの原動力となる。「子供の気付きや問いに基づくこと」や「必要感や切実感をもって解決できること」「実生活や実の場につながること」などに留意し、子供にとって価値のある学びとなるように課題づくりを行っている。

その際、「付けたい力」「言語活動」「学習材」「題材や話題」を課題意識の向けどころとし、扱う内容や順番を吟味している。これらを通して、意欲や見通しをもって課題を解決する子供たちの姿が見られている。

②思考・判断・表現を促す手立てを講ずる

子供たちの思考・判断・表現を促すために、「思考表現」「思考ツール」「発問や指示」「モデル提示」「交流」の中からねらいの実現に効果的な手立てを選び、授業を構想している。思考場面では、「比較する」「分類する」「関係付ける」「理由付ける」「推論する」といった5つの思考方法を意識し、その思考方法に合った「思考表現」や「思考ツール」(図にその一部)を取り入れている。前述の手立てを講じて子供たちの思考を活性化することで、思考・判断・表現が充実するのを実感している。

また「交流」については、「授業のねらい」を軸として「内容」「目的」「方法」「構成メンバー」「形態(ペア/グループ/全体)」「教師の役割」などを吟味することで、授業のねらいに迫る交流の実現を目指している。

思考場面では、「並べる」「類別する」などの思考の具体を示し、低・中・高学年で、どんな思考方法に注力するかを系統立てて示した。また思考方法ごとに、2年生の「お手紙」、3年生の「モチモチの木」などでの発問例を示した。

③学びの成果からさかのぼって授業を構想する

子供の学びの成果(活動での表現、振り返りでの表現)を描き、そこからさかのぼって、授業を構想する。そのことで、指導や評価について、具体的・効果的に計画できるようにしている。

学習指導案には、「評価規準」「見取りの観点」「表現例」「到達していない子供への支援」を明記し、実際の学びの姿と照らし合わせながら、事後検討会を行っている。学びの成果を描くことで、学習内容が明確になり、必要な手立てを見極めて講じるのにつながっている。

評価を進める上での留意点と評価方法については「単元指導事項マトリックス」で示している。「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」について、評価の留意点と、発表メモや取材メモなどの領域独自と、共通の評価方法を押さえていく。

②については今後、単元において必要な場面を吟味して交流を位置付けることにも留意していきたい。

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岐阜県大垣市立赤坂中学校

 

3点で評価し授業を改善 他者意識や家庭学習を重視

20170101_02-03岐阜県大垣市立赤坂中学校は、「国語の学び方が定着し、仲間とともに確かな学力を身に付ける指導の工夫・改善」を研究主題に、実践に取り組んでいる。平成27、28年度国立教育政策研究所教育課程研究センターによる教育課程研究指定校事業「国語」による研究実践である。

まず、研究主題の「国語の学び方」について探究し、「書かれている言葉の意味や用法に常に立ち返り、その効果を考えながら課題を解決し、適切に表現していこうとする学び方」とした。

その上で研究内容を、①授業改善=「付けたい力」を効果的に身に付ける言語活動を設定し、目的と必然のある指導計画を作成した授業実践②学ぶ姿勢づくり=意見交流の仕方を身に付け、仲間から学んだことを取り入れて考えを深める指導③家庭学習の充実=基礎学力の定着を図る家庭学習の継続とその見届け――の3点とした。

①の授業改善では、単位時間の終末で目指す姿にたどり着くために、指導と評価の一体化を図った。評価の視点を、▽つかむ▽伸ばす▽確かめるの3つとし、これらを指導計画に位置付けた。

「つかむ評価」では本時の学習をするために必要な既習事項を見定め正しく理解しているかを、「伸ばす評価」では本時の学習活動で、机間指導や意見交流などを通して学ぶ内容を適切に把握しているかを、「確かめる評価」では本時の学習によって理解すべき内容や身に付けるべき技能が定着しているかを見取る。

また職員室前に掲げられている湯川秀樹筆「学而不厭」の扁額から論語を学んだり、大学研究者から俳句について学んだりと、生徒が一流に触れて学ぶ意欲を高める取り組みにも力を入れた。

②学ぶ姿勢づくりでは、ペアや小グループなど学習の目的に適う交流集団を設け、問題解決のために積極的に話し合うようにした。その際、交流集団内で、▽聞く=聞いてから質問するなど▽話す=聞き手の反応を見ながら話すなど▽書く=今までに習った言葉や考えを使って書くなど――のポイントを一覧表にし、それらを押さえながら学びを深めていった。

また仲間との交流の途中でも、よかった姿や考えなどを全体に広め、常に他者意識を重視した学び合いを大切にした。

③の家庭学習の充実では、内容をよく吟味し、本時の学習に関わる宿題を出していった。こうした家庭学習で考えたことを次時の導入で活用し、家庭学習との連続性を生むようにした。

こうした取り組みの成果を検証するために、全国学力・学習状況調査における各観点の全国正答率との比較を行った。

その一例として、B問題の「文章の中心的な部分と付加的な部分を読み分け、要旨を捉える」では、研究を始めた昨年度には「やや低い」が、今年度には「やや高い」に向上した。総じて、A問題では「話すこと・聞くこと」「読むこと」に、B問題では「書くこと」に改善が見られた。

生徒の変容としては、▽学びを実感している姿が見られるようになった▽授業と家庭学習をつないだので、生徒の学ぶ意識が継続するようになった▽自分の意見を主体的に発言する生徒が増えた――などが見られた。

今後は、授業での3つの評価が教員からの一方的なものに終わる場合があったので、生徒自身が評価する活動を増やし、自己を評価する力を高めていくなどを課題としている。

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