【新年特集 提言と実践】算数・数学


次期指導要領が、今年3月に告示される。本紙は全連小と全日中の協力を得て、授業実践に先駆的に取り組む小・中学校をクローズアップした。また識者にも、各教科の課題など提言を寄稿してもらった。算数・数学は、芳沢光雄桜美林大学学長特別補佐の提言と、山形県三川町立東郷小学校、茨城県大洗町立南中学校の実践を掲載する。

[vc_tabs interval=”0″][vc_tab title=”提言 桜美林大学学長特別補佐 芳沢光雄” tab_id=”1482740758689-2-2″]
桜美林大学学長特別補佐 芳沢光雄

 

「社会に開かれた教育課程」 それは「生活に開かれた学び」

20170102_01-01次期学習指導要領に向けた審議のまとめおよび答申の中で強調されている「社会に開かれた教育課程」は、「生活に開かれた学び」「生活を志向した学び」であるといえよう。以下、私の専門である算数・数学の視点から、それらに関して述べたいと思う。

私自身は、1990年代半ばまでは、いわゆる純粋数学の一研究者だった。それ以降、数学教育に軸足を移して、広く数学教育活動を展開してきた。その根本には、日本の子供たちの「数学嫌い」が、諸外国と比べて顕著な状況がある。

いわゆる「ゆとり教育」や「マークシート式問題」の問題点も指摘し、それらの改善に向けたさまざまな主張も展開してきた。

しかし、最も重視してきた活動の要点は、子供たちが算数・数学に興味・関心を持つための「社会や生活と結びついた」題材の開発・紹介だった。

具体的には、次のような題材である。

代数的(構造)な面では、整数の不定方程式としての誕生日当てクイズ、あみだくじの仕組み方と写像の概念などなど。解析的(変化)な面では、累乗の恐怖としてのヤミ金融、等比数列の和の応用としての元利均等返済などなど。幾何的(図形)な面では、三角比の応用としての実際の測定、円に接する直線の応用としての山頂からの眺望など。

論理的な面では、日本語と英語の関係から「すべて」と「ある」の用法、数学的な立場の「または」と日常の立場の「または」の違いなどなど。確率・統計的な面では、膨大なデータからのじゃんけんの有利な方法、標準偏差から分かる入試での社会と数学の得点分布の違いなど。

他にも数多くの題材を開発・紹介し、著書等で発表してきた。

およそ200校近くの小・中・高校で行った出前授業や大学生対象の授業で得た感想などから、社会や生活と結びついた題材は、数学嫌いを数学好きに変える効果が大きいのが分かった。

ところで、多くの数学の教育に携わる人たちから、「芳沢先生はなぜ生きた題材を次々と思い付くのですか。何かを参考にされているのですか」という質問をよく受ける。この質問に対する回答は重要なので、ここで述べておきたいと思う。

まず、社会や生活のあらゆる課題に興味・関心を持つこと。そして、それぞれの話題を数学的に捉えると何が言えるのかを自問する。さらに、きちんとまとめて発表し、さまざまな感想をもとにして改良する。

最後に、そのようにして得た最近の題材を紹介しよう。それは、サイコロキャラメルの数学教育的な意義を明確に表している。そのうちの2つを示す。

1つは展開図である。空間図形は平面図形と比べて扱いが難しいからこそ、空間図形は扱いやすい展開図や投影図などの平面図形に落として考える。立方体の展開図は11種類あり、いろいろと試行錯誤しながら、11種類を各自で見付けるのが大切なのである。

もう1つは、確率の学びで最も大切な「同様に確か」という言葉の理解である。最近の子供たちは、テレビやスマートフォンでのゲームの影響で、双六遊びをあまり行わなくなってきた。だが、双六遊びを実際に行うことによって、サイコロの各目は「同様に確か」なのを学ぶのである。

1927年(昭和2年)に誕生した明治製菓株式会社(販売当時の社名)のサイコロキャラメルは、昨年1月で生産打ち切りとなった。そして現在は、明治の子会社の道南食品から「北海道サイコロキャラメル」として生産・販売が行われている。私は、サイコロキャラメルの数学教育的な意義を訴える動画を道南食品と一緒に作成し、昨年11月末に、ネット上で公開した。

「社会に開かれた教育課程」を「生活に開かれた学び」と読み替えて、ぜひ、生活に密着した、生活に根付いたところから、算数・数学教育を見直し、実践していただきたいと思う。

トップに戻る

【関連記事】

◯【最新】次期学習指導要領の関連記事

[/vc_tab][vc_tab title=”実践 山形県三川町立東郷小学校” tab_id=”0f01cede-372e-7″]
山形県三川町立東郷小学校

 

コミュニケーションに力注ぐ 考え、学び合う力高める
自分の考えを分かりやすく伝える
自分の考えを分かりやすく伝える

山形県三川町立東郷小学校は、同町教育研究所の委嘱を受け、平成26、27年度に「算数的コミュニケーション活動を通して、考え、伝え、学び合う力を高める授業」を探究した。実践研究に当たっては、主題の言葉を定義していった。

まず、「算数的コミュニケーション活動」とは、「問題に対する自分の考えを算数的に言葉・数・式・図・表・グラフを使って表現したり、友達の考えを聴いて自分の考えを深めたり、友達の考えを認めながら自分の考えを伝えたりするのを通して、相互に啓発し合い、考えを深めていく活動」とした。

「考える力」とは、算数的に思考する力。新たな問題に直面したとき、その内容を確実に読み取り、既習の知識や解き方(公式、具体物、図や線分図や表などの思考の道具、思考方法、算数用語など)を効果的に活用して問題を解く力。複数の解き方が出されたとき、どの方法が最もよいかを検討する力。思考方法とは、▽仮定する▽帰納的にみる▽類推する▽演繹的にみる▽拡張する▽変換するなど。

「伝える力」とは、算数的に表現する力。自分が考えたことを友達に伝えるために、算数的表現方法から一番分かりやすいと判断した手立てを活用して説明する力。算数的表現方法としては、▽現実的表現▽操作的表現▽図的表現▽記号的表現▽言語的表現。

「学び合う力」とは、友達と双方向のコミュニケーションを行い、自分の考えを吟味し、友達の考えを取り入れ、考えを発展させる力。

授業展開では、▽易から難へのステップを踏み児童の発言を促す▽既習とのずれを作り、本時のめあてをつかむ▽復習問題で考える手掛かりを確認した上で主問題を提示し、学び合いを展開する▽考える力を身に付けるために、教科書よりも難度の高い上級・スーパー上級問題を用意する▽座席を工夫して3人1組みで学び合いができるようにする▽毎時間、学び合いのときの教え方・教わり方・説明のコツを掲示し、実施する――といった手立てを工夫した。

学習活動では、百分率の単元で「定価500円の品を30%引きで売るとしたら何円?」といった問題を解くために、思考の道具として「Hゼロゼロ型線分図」を活用した。横長H型の、中央の横線分の下にモデル式、上に与題を書き、解を求める。立式も簡単に表せるので理解が深まった。

こうした手立てや思考ツールを活用しながら学び合った児童らの間には、「分からないから教えて」「いいよ」「あっそうか」「ありがとう」などといった言葉がごく普通に飛び交う。拳を高く突き上げてガッツポーズを取る児童の姿もあった。

実践研究を検証するためにアンケートを実施。児童からは、「算数の勉強が好き」「新しい問題に出合ったとき、解いてみたいと思う」「算数で勉強したことを生活の中で使えないか考えたことがある」「答えだけでなく、どうしてそうなるのか、そのわけも考える」について、肯定的な回答が増えた。教員からは「問題の意味を一生懸命に考えている」「自分の考えを発表する」「あきらめない」などの児童からの手応えについて、肯定的な回答が増えた。

算数科については、都合8年間研究している。そこで蓄積してきた指導法を継承しながら、研究実践で明らかになった、文章や問題文を読み取る力や、自分の考えを表現する力を高めるために、今年度は国語に軸足を移し、「読解力を育成する国語科授業」を研究主題としている。

トップに戻る

【関連記事】

◯【最新】次期学習指導要領の関連記事

[/vc_tab][vc_tab title=”実践 茨城県大洗町立南中学校” tab_id=”f190b0d6-ce95-2″]
茨城県大洗町立南中学校

 

ホワイトボードで学びを交流 MRノートで考えを深化

えとき1=MRノートには生徒の学びと教師からのコメントが蓄積していく
えとき2=ホワイトボードで考えを練り合う生徒

茨城県大洗町立南中学校は、昨年度と今年度の2年間にわたり、「数学科における思考力・判断力・表現力の育成を目指した学習指導の在り方~協働的な学びを大切にした授業づくりを通して」をテーマに実践研究に取り組んでいる。ホワイトボードを学びの交流の場と思考の道具として活用したり、学習まとめや振り返りのための「MR(Mathematics Review)ノート」を工夫したりする中で、自分の考えを深化させ、確かなものにしている。

実践研究は、26年度に単年度研究指定「教育課程(数学)」を受けて明らかになってきた課題をさらに深掘り。今年度は(1)自ら考えを広げたり深めたりするための授業づくりの在り方(2)生徒の学びを確かなものにするための生徒の見取りや、数学の良さを実感し、次の学びにつなげる評価の在り方――の2点に焦点化。「協働的な学びを大切にした授業づくり」が、生徒の思考力・判断力・表現力の育成に有効であるのを明らかにした。
生徒の思考力・判断力・表現力につながる深い学びには、他生徒と考えを交換しながら何度も思考し、表現し直して、自分なりに納得できる答えや考えを見つけていくのが重要。そのため、数学的価値に迫る工夫として生徒同士が互いに納得するまで意見を交わす時間を重視した。

ホワイトボードで考えを練り合う生徒
ホワイトボードで考えを練り合う生徒

1年生の「比例・反比例」では、実生活や社会に開かれた課題として「大洗町に地震が到達した時刻を予想しよう」を追究。阪神・淡路大震災の震央から大阪市などまでの距離と、P波、S波の到達時刻を示した表に基づき、生徒同士で学びを深めた。その際、ホワイトボードが学びの交流の場となり、思考を練る道具となった。

こうした学びを確かなものとしていったのが、MRノートだった。

ノートの大きさは、無理なく1ページを書き尽くせるA5サイズ。そこを埋め尽くすと、達成感が生まれる。5ミリ平方の方眼マス目で、図形やグラフが書きやすい。その日の学習まとめや後々の学習で重要となる事項、公式、定義、間違いやすい計算など、自分で「これは大事だ」と思った内容を書き込んでいく。余白ができたら、自ら練習問題を解くようにした。

このノートの前には振り返りカードを用いていた。だが、「~が分かった」「~をがんばった」などといった主観的な内容の記入が主で、マンネリ化。学習内容の定着や次に生かせるツールとはなっていなかった。

これに対してMRノートは、授業中に手元に置いて既習事項を確認したり、家庭学習で活用したり。一次方程式や一次関数、平行と合同などの学習のねらいや学習内容を、自分の言葉で捉え直している姿が見られるようにもなった。ノートは自分の学習活動を蓄積した、生きた学びの履歴書となった。自分の考えを表現し交流させるホワイトボードでの学び合いの活性化にもつながった。

こうした取り組みによって、生徒にどんな変容がもたらされたのか、アンケートを実施した。

それによると、協働的な学びによって問題解決に取り組み、もっと簡単な解法はないかなどについて、諦めずに多様な方法を考える、学びに向かう姿勢や学習に対する意欲、考えを深め整理して相手に伝える意欲やスキルが、目立って向上していた。

授業の終末に自分の考えを見つめ直す時間不足の解消や、新たな単元開発などが今後の課題である。

トップに戻る

【関連記事】

◯【最新】次期学習指導要領の関連記事

[/vc_tab][/vc_tabs]

あなたへのお薦め

 
特集