【新年特集 提言と実践】図工・美術


次期学習指導要領が、今年3月に告示される。本紙は全連小と全日中の協力を得て、授業実践に先駆的に取り組む小・中学校をクローズアップした。また識者にも、各教科の課題など提言を寄稿してもらった。図工・美術は、大野正人全国造形教育連盟委員長(東京都杉並区立井草中学校長)の提言と、新潟県糸魚川市立青海小学校、秋田県大仙市立西仙北中学校の実践を掲載する。

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全国造形教育連盟委員長 大野正人

 

多様性の伸長や地域との連携で 豊かな人間性を育成

20170102_02-01平成28年8月26日に示された「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」は、教育活動の方向性を示すものとなっている。

これまでも、図画工作科、美術科、芸術科(美術、工芸)においては、現行学習指導要領の下、尽力してきたところだが、今後さらなる改善を図っていく必要がある。

学校教育法第30条第2項に定められる、学校教育において重視すべき三要素である「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」は、新しい時代に必要となる育成すべき資質・能力の3つの柱とともに、相互に関連させながら一体的に取り扱える教材を通して、子供たちを高めていく必要がある。

造形美術教育、とりわけ表現活動においては、創造的な造形活動のみに陥ることなく、造形的な創造活動や鑑賞を通して、子供たち一人ひとりの個性ある資質・能力を引き出し、高めていくことが重要であり、答えや考え方が1つではない多様性を伸長するのが肝要である。

画一的な技術指導だけではなく、想像力を働かせ、イメージやアイデアを生みだす発想・構想する能力、そして、思考・判断し作品などの表現にまとめあげる知識・技能、情意の育成が求められている。

ピカソが「ゲルニカ」で訴えたように、時代や社会の課題や問題点、あるいは身近な生活をより良く、より豊かにするデザインやCM、製品など、改善課題の発見やそれを解決する能力の育成が求められている。

知っているだけではなく、ペーパーテストだけでは推し量れない、真にクリエーティブな資質・能力の育成が重要となる。

鑑賞活動においては、知性と感性を働かせ、より能動的に感じたり気付いたりする力を育成する必要がある。名作の鑑賞も重要だが、身近なものや友達の作品、あるいは自分が制作途中のものを鑑賞し、よりイメージに近づくよう評価できる能力の育成も必要だ。そのため、表現と鑑賞の関連を図った教材、授業など、表現と鑑賞の一体化と充実が重要である。

また、グローバル化する現代では、日本伝統文化の理解・継承、各国の多文化の理解と受容などを通し、協働性の育成も重要となる。

本連盟は、造形美術教育関連諸団体と連携を図り、平成28年10月20日、「美術教育提言」にまとめ、文部科学省および中央教育審議会に提出した。提言文とともに、現行の観点と次期3観点の資質・能力の相関について、47項目に整理したマトリックスにまとめたものを提出した。

また、幼児から小学校、中学校、高校の美術、工芸まで、各項目と対応させた実践事例を示した。内容については、本連盟および関連団体のホームページで公開しているので、ご覧いただきたい。

年度内に次期学習指導要領が示される予定となった。関係する教員、教員養成機関が改訂の趣旨を踏まえ、子供たちが形や色、イメージなどの視点を持ち、実生活や社会と豊かに関わる資質・能力の育成を通し、情操教育の進展を推進する必要がある。

そして、自立した、幸福で文化的な生活、より良い人生を送る豊かな人間性の育成に向けて、全国の地域、各校種が連携し、明るい未来となることを祈念する。

(東京都杉並区立井草中学校長)

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関わり作り出す力を培う 図画工作科授業を創造
1.研究主題の意図
体全体を働かせて図画工作に取り組む
体全体を働かせて図画工作に取り組む

本校では、「手や体全体の感覚などを働かせる造形的創造活動の基礎的能力を発揮して、生活や社会と主体的に関わる態度や、それを喜びと感じる心」の状態を「関わり作り出す力」と考えた。 そして、その力を培う授業こそが、他者、社会、自然・環境とともに生きる自信、ひいては豊かな人間性―「生きる力」に結び付くと考え、標記の研究主題を設定し、3年間、研究を行ってきた。

2.重点的に取り組んだ具体的な手立て

(1)教師、友達、保護者、地域の人々と関わる場の設定(2)地域の素材、人材、場を活用する題材開発(3)表現と鑑賞を往還する授業づくり(4)「関わり作り出す力」を適切に評価するための工夫

3.授業実践の例「5年思いを形に名引山ハート・アートプロジェクト」

5年生は、学校に隣接する名引山をフィールドとして総合学習を展開してきた。名引山の自然の豊かさに心をひかれ、草刈りや遊歩道整備、自然学習などを行い、その魅力を地域に発信したいとの思いを持った。そして、青海地域を代表する素材であるセメントを使ってオブジェを作り、遊歩道に設置しようと考えた。

具体的には、▽1作目をデザインするときに、教師が精選したイラストレーターの作品を鑑賞▽1作目を型から外す場面で友達と作品を鑑賞し合う▽ペアで屋外に自由に展示して鑑賞▽タブレットで撮影――など、表現と鑑賞を往還する場面を設定した。

活動を通して、互いの作品の思いや工夫に気付くとともに、作品を置く場所や置き方によって印象や物語が変わると気付き、2作目を主体的に構想したり、創作意欲を高めたりできた。

4.成果と今後に向けて

研究を通して、図画工作科を中心に児童の主体性や表現力、創造力などの向上が見られた。図画工作に対する意識調査でも、全国に比べて高い肯定的評価が得られた。

また、職員の題材開発に対する意識や素材・環境の見方、目指す子供の姿を想起して指導方法を構想したり、児童の姿を見取ったりする姿勢が向上した。

今後も、発達段階に応じて他者との関わりを広げるとともに、主体的・対話的で、深い学びの実現に向けて指導方法の見直しと改善を図っていく。

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未来をつくる原動力に 地域社会と共に歩む美術教育
■美術室から外の世界へ
和菓子づくりで伝統文化や地域のよさを学ぶ
和菓子づくりで伝統文化や地域のよさを学ぶ

現行の学習指導要領の課題に、「生活を美しく豊かにする造形や美術の働き、美術文化についての実感的な理解を深め、生活や社会と豊かに関わる態度を育成することなどについては、さらなる充実が求められている」とある。

本校は、各学年で生徒の暮らす地域を題材に盛り込んでいる。その一つの題材が、「ふるさと再発見!地域の創作和菓子」である。

学習指導要領の2年生A 表現(2)(3)、目的や条件を下に発想し、客観的な視点に立ってデザインする。

自然豊かな田園地帯に暮らす生徒の多くは、意識しなければその地域の良さや豊かさに気付かずに生活している。

同題材は、日本の伝統文化や地域の良さを、和菓子づくりを通して再発見するとともに、地域の良さを形や色に置き換え、地域の人々を対象に発信するもの。

きれいな和菓子の模型を作るだけの授業ではない。和菓子を食べ、五感を働かせながら和菓子の役割や目的を学ぶ。生徒一人ひとりの生活と美術をつなげ、自分の表現したものが地域社会とつながるのだ。

生徒は身近な自然の良さや季節感を自分なりの視点で捉え、材料などを自己決定しながら制作していく。生徒自身が思い描くイメージ通りに作る楽しさ、それらが地元の菓子店で展示され、多くの人に見てもらえて商品販売される喜びがある。

生徒がデザインした和菓子を食べた人の感想を聞き、美術室で考え生み出したものが、地域の方から共感され、喜んでもらえる実感を得るのである。

授業の始めは「何もない田舎」「山と田んぼだけ」とマイナスイメージを抱いている生徒が多かった。しかし、和菓子制作を通して、普段見過ごしていた季節の小さな変化や自分の住む地域の良さに、次第に気付いていく姿に変容する。

単に地域社会とつながるだけでなく、「美術」の働きが地域住民の感性を高め、中学生と同じ目線で地域の良さや美しさを共有するのは、美術を学ぶ上で実感的な理解となり、生きて働く力となる。

地域の人的・物的資源を活用し、学校教育を学校内に閉じず、目指すところを社会と共有・連携しながら実現させる。次期学習指導要領でも、これからの教育理念として掲げられるものである。

この授業での経験は、いずれ地域の担い手となる生徒にとって大きな力に変わるものとなる。自分を作り、地域をつくり、そして未来をつくっていくことになると考えている。

「創造活動の喜び」は未来をつくる原動力になる。そう信じて日々の授業を行っていきたい。

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