【新年特集 提言と実践】プログラミング教育


今年3月の次期学習指導要領告示に向け、プログラミング教育について、阿部和広青山学院大学客員教授に提言を寄稿してもらった。また、文科省生涯学習政策局情報教育課情報教育振興室の新津勝二室長にインタビューし、何をどう教えればいいのかや、そのための準備などについて聞いた。茨城県古河市立中央小学校の実践も掲載する。

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プログラミング教育 何を教える?
「先生方もぜひ体験を」
文科省生涯学習政策局情報教育課情報教育振興室 新津勝二室長に聞く

新津室長プログラミング教育では、児童に何を、どう教えればいいのか。そして、何を準備すればいいのか。文科省生涯学習政策局情報教育課情報教育振興室の新津勝二室長に聞いた。

◇ ◇ ◇

――プログラミング教育では、教員は児童に何を教えればいいのか。

情報手段の特性(コンピュータやネットワークの仕組み)を理解した上で、情報活用の実践力を高め、情報モラルを含む情報社会に参画する態度を育成しなければならない時代になってきている。そのため、小学校段階から体験的に学習するプログラミング教育が必修化されることとなった。

有識者会議のまとめで示された「プログラミング的思考」は、実は日常生活の中でも使ってきている。例えば、掃除をする際にはどの手順の効率がよいのか。上からはたくのか、下から拭くのか。料理も同様で、冷蔵庫にある食材をどう組み合わせ、どう調理すれば、食べたい料理ができるか。

今までは「要領よく」「効率よく」と捉えていたが、その一つ一つの動作を記号として捉えて、最善の組み合わせを論理的に考えること。そうした思考などを育むプログラミング教育の実施を、子供たちの生活や教科などの学習と関連付けつつ、発達の段階に応じて位置付けていくことが求められている。

教科などの指導と身近な生活の中でのコンピュータとプログラミングの働きに結び付けさせるのが、小学校段階における体験的なプログラミング教育だ。難しくて教えられないと不安を感じている先生方が多いと思うが、今までも日常生活や授業で、そういう思考を使って学習してきていることを振り返っていただきたい。

――プログラミング言語に不安を持つ教員も多いようだが。

プログラミング教育という言葉でイメージされやすいのは、プログラミング言語を使ってのコーディングだと思う。しかし、小学校段階では想定されていない。

ビジュアル言語といって、一つ一つの動作に必要な命令文が入ったブロックの組み合わせや数値を変えることによって、キャラクターに自分が意図した動きをさせることができる便利な教材がある。それを使えば、子供たちは体験しながら楽しんでプログラミング教育を学習できる。

例えばMITが開発した、子供向けの「Scratch(スクラッチ)」。無料でダウンロードできて日本語で使える。私自身も体験したが、簡単かつ奥が深く、とても興味深かった。実際に体験することにより、先生方の不安も少なくなると思う。

他にもいろいろな教材があるので、研修会などを利用して、全ての先生方にプログラミング教育を体験していただきたい。

――平成29年度の課題は。

教育課程内で利用できる教材が少ないので、各教科等の教育目標を達成できる教材を開発することが必要だ。国と企業・団体とが連携して開発していかなければならない。

併せて、単元の指導計画や指導案を実践例として示さないといけない。特に、小学校段階におけるプログラミング教育は実践例が少ないので、企業やNPO法人、地域の方々にもお願いして支援体制を整えることも必要だ。

その前提として、学校におけるICT環境整備の推進(底上げ)とともに、先生方のICT活用指導力を向上することが重要であるのは、もちろんいうまでもない。

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青山学院大学客員教授 阿部和広

 

創造的な学習者へのきっかけに 学校や教員の役割も変化

阿部教授答申では、プログラミング教育を「将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる『プログラミング的思考』などを育むもの」としている。

「プログラミング的思考」は聞きなれない言葉だが、有識者会議では「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組み合わせが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組み合わせをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」と定義している。

一読すると、これは私たちの生活と無関係に思える。しかし、私たちはコンピュータの中だけではなく、これを日常的に行っている。たとえば、料理や掃除、仕事の段取りをするときなど、なにを、どの順番で行うか考えないことはない。

つまり、プログラミング的思考とは、人間がコンピュータのように考えることではなく、コンピュータを含む物事を効率良く合理的に動かすためにプログラマーが行っている思考法のことである。これは次期学習指導要領の理念のひとつ「社会に開かれた教育課程」に通ずる。

実際のプログラミング教育は、小学校では、独立科目ではなく、既存教科の単元と結び付けられる。例えば、算数や理科では、多角形が持つ幾何学的性質を、プログラミングによる作図を通して発見すること、図工や音楽では、自分のアイデアを、音や動きを伴ったマルチメディア作品として表現することなどが考えられる。

その際、教科の特質を無視して、強引にプログラミングを取り入れたり、逆に1時間だけプログラミング体験を行ったりするのではなく、子供たちが、何を学び、何ができるようになるべきかを基準に、教科の狙いと合致した組み合わせを見いだすことが肝心である。

「カリキュラム・マネジメント」が求められているのは、プログラミング教育も変わりがない。教材は、教育委員会や小学校、民間や学術機関などと連携しながら開発・改善を行うとしている。

一方、人員と環境の課題もある。現実問題として、学校現場にプログラミング教育に詳しい教員が配置されているとはいえず、その養成や研修、研究は急務である。ただし、これは高度なプログラミング技術ではなく、基本的な考え方や教科との関係性を、授業案作成などを通して実践的に習得する者が望まれる。

また、校務合理化などで、教員の過剰負担にならない配慮も必要である。

次に、環境については、プログラミングに必要な機材が絶対的に不足している。学校の教育用コンピュータ数は、全国平均で6.2人/台に過ぎない。これらには過剰とも思えるセキュリティ対策がなされている一方で、多くは十分な保守を受けておらず、プログラミング環境として不十分といわざるを得ない。

近年、コンピュータのコストは下落しており、BYODの可能性も含め、既存の教育用コンピュータやデジタル教科書の文脈と切り離して、教員や子供たちが、日常的に1人1台使える端末の導入が望まれる。経産省、総務省との連携はもとより、ICT環境整備のための地方交付税を特定財源化することも期待したい。

プログラミング教育の特徴は、扱う対象が極めて広いことである。これは、コンピュータはプログラム次第でどのようなものにでもなる性質に由来する。あるときはピアノになり、コンパスや定規になり、絵具や筆にもなる。従来のICT教育と違うのは、他者から与えられたプログラムを使うのではなく、自ら作り出す過程で学ぶことにある。

子供たちの関心は多様で、目の前に積み木を置くと、自然といろいろなものを作りだす。その遊びを観察していると、その中から「主体的・対話的で深い学び」が発生する様子を見いだすことも、決して稀ではない。

子供たちとプログラミングとの出会いが、デジタルの消費者から創造的な学習者へ変わるきっかけとなるように学校や教員の役割が変わることを願ってやまない。

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茨城県古河市立中央小学校

 

論理的な思考の一端を学ぶ ゲーム的な要素を取り入れ
夏休みを使い、高学年児童を対象に希望制で開催した
夏休みを使い、高学年児童を対象に希望制で開催した

茨城県古河市立中央小学校は、児童数486人の中規模校で、平成27度9月に市教育委員会から40台のタブレット端末(LTE内蔵)が導入された。

端末が導入された当初は、どのように活用していくか教職員の間で不安や戸惑いがあったが、古河市教育委員会主催の研修を重ね、各校で指導的な働きができる教員(エバンジェリスト)と情報教育に精通した教務主任を中心に、校内外の各種研修や教材研究などを実施し、現在では全学級全担任が活用できるところまできている。

活用方法としては情報収集だけにとどまらず、プレゼンテーションや各種アプリケーションの活用、画像や動画での記録、行事での活用など現在も活用の幅が広がりつつある。

今年度になり、平成32年度からの次期学習指導要領でプログラミング教育の必修化が決定された。それに伴い、夏季休業中に高学年児童を対象とした希望制のプログラミング教室を開催した。

この教室は、一般社団法人みんなのコードのHour of Code事業を活用し、限られた数のプログラミングブロックを組み合わせて課題を解決していくゲーム的な要素を取り入れた内容。

6月に校内エバンジェリストからの実施提案を受け、校長・教頭・教務主任で方向性を決め、校内の会議にかけ教職員の共通理解を図り、募集から7月末の実施まで組織的に進めた。

プログラミング教室では、児童はゲーム感覚でプログラミングを学ぶことができた。課題を解き進めていくと、より速く、より効率的に課題を解こうとする児童が多く見受けられた。

学習後のアンケートを見ると、「プログラミングで自分の考えた動きを表現できることがわかった」「もっと少ない動きで解こうと一生懸命考えた」というような感想が書かれており、論理的な思考の一端を学ぶことができた。

次期学習指導要領では、小学校でのプログラミング教育は各教科や特別活動などの中で取り組まれることになり、プログラミング教育を目的として授業を行うわけではない。

今後は、各教科などの目標達成のために、プログラミング的思考の教材を生かす手立てや工夫を試行錯誤の中で作り上げることが大切になる。

本校では、低学年では紙媒体を使用したプログラム学習、中学年ではタブレット端末を活用し、Hour of Codeや、Scratchといったビジュアルプログラミング、高学年ではSpheroやレゴマインドストームなどの具体物を動かすことを視野に入れ、学年に応じた授業を目指していきたいと考えている。

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