小学校道徳科学習指導要領案 組織的計画的な底上げを

学習指導要領案 教科・領域改訂のポイントをどう考えるか 〈7〉小学校道徳科

次期の学習指導要領案は2月14日に公表されたが、教科となった「道徳科」は、他教科・領域に先立ち、小学校では平成30年度から、中学校では31年度から全面実施となる。このうち、小学校でのポイントについて、全国小学校道徳教育研究会の会長を務める金子雅彦東京都台東区立富士小学校長は次のように指摘する――。


◇全学校の全教員が同じ程度に道徳教育を◇

道徳の改正学習指導要領の全面実施は、従前から指摘されてきた学校や個人による取り組み方や内容についての温度差を是正し、全ての学校で、全ての先生が同じ程度に道徳教育、とりわけ道徳科の指導ができるようになることが大きなカギとなる。

そのためには、どの学級でも年間35単位時間の授業が実施される量的な確保と、子供たちが道徳的価値を理解し、これまで以上に深く考えて、その自覚を深める質的な転換が図られなければならない。

平成27年に学校教育法施行規則が改正され、小・中学校学習指導要領が一部改正されて、「道徳」は「特別の教科 道徳」(道徳科)とされた。その目標は、「よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うために、①道徳的諸価値についての理解を基に、②自己を見つめ、③物事を多面的・多角的に考え、④自己の生き方についての考えを深める学習を通して、⑤道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てる」となった。授業者の明確な指導観に基づき、ここに書かれている①から④までの学習を通して、⑤に挙げられた道徳性の諸様相を育てることを目標とする。

◇考えを深めていく◇

道徳科では、日常生活や今後出合うであろうさまざまな場面、状況において、道徳的価値を実現するための適切な行為を主体的に選択し、実践できるような内面的資質を高める授業が、年間35時間(1年生は34時間)実施されなければならない。

道徳的価値①とは、人間としてよりよく生きるために必要とされるもので、改正では扱う価値について、いじめ問題への対応の充実や発達の段階を一層踏まえた体系的な内容に改善され、「個性の伸長」「相互理解、寛容」「公平、公正、社会正義」「国際理解、国際親善」「よりよく生きる喜び」の内容項目は、これまでより早い段階で扱われるようになった。ここでは価値理解とともに、人間理解や他者理解を深めていくことが大切となる。

そして②の自己を見つめる学習では、これまでの自分の経験やそのときの考え方、感じ方と照らし合わせながら、道徳的価値についての理解と同時に、自己理解を深めていく。現行の道徳の時間でも、子供たちが考えを深めることを大切にしてきたが、道徳科では③にあるように、多様な価値観の存在を前提として、他者と対話したり協働したり(質の高い話し合い・議論)しながら、さまざまな考え方や価値観に触れ、物事を多面的・多角的に考えていくことがより強調されている。

以上述べたような価値の自覚を深める学習の過程で、道徳的価値を自分のこととして理解し、④のように自己の生き方についての考えを深めていくことが求められる。

これらが道徳科の目標であり、授業者の明確な指導観に基づいてこれらの学習をする時間が、道徳科の授業となる。

◇道徳科の特質を押さえた授業づくりを◇

改正の主眼は「考え、議論する道徳」への転換といわれる。しかし、これまでの道徳の時間でも、子供たちを深く考えさせ、質の高い話し合いをさせるために工夫を重ねてきた授業者は多くいる。上記の道徳科の目標を読み返して、今回の方向性と大きく変わらない授業をこれまでもしていると感じた場合は、急な変更をする必要はない。さらに効果的な指導方法を考え、道徳科の特質を生かすために必要と判断した場合は、問題解決的な学習や体験的な学習などを取り入れた指導方法の工夫にぜひ取り組み、校内や地域の学校に発信していただきたい。

一方、これまで自分が取り組んできた道徳の授業は、読み物資料に登場する人物の心情理解に終始していたと感じたり、望ましいと思われることや決まりきったことを言わせたり書かせたりする、価値の押し付け道徳だったと感じたりするようであるなら、これまでの道徳の時間で行われてきた効果的な指導方法について、この機に勉強をしなおし、そこから道徳科の授業の特質を押さえた授業づくりを学ばなければならない。

答えが一つではない道徳的な問題を考える道徳科の指導方法を、独学で学ぶのは難しい。近くにいる「道徳の時間」の授業づくりに堪能な教師や講師の力を借りて、校長と地教委の強いリーダーシップの下、学校や地域の全ての教員の授業力の底上げを、組織的計画的に推し進めること、それが「特別の教科 道徳」(道徳科)の全面実施の大きなポイントとなる。

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