児童が地域課題を解決 能動的・主体的な授業を報告

博報財団こども研究所のシンポジウム
博報財団こども研究所のシンポジウム

(公財)博報児童教育振興会博報財団こども研究所はこのほど、都内でシンポジウム2017「~地域まるごと学校だ!~」を開催した。同研究所が平成28年に静岡市立清水江尻小学校と共同で実施した調査研究プロジェクト「地域を動かす子どものパワー!」の調査結果報告が行われた。

同校5年生に、地域と関わりながら地域課題を解決していく「能動的・主体的な授業」を実施。その過程での子供たちの変化をまとめた。加えて、全国各地で子供、保護者、教員を対象にした大規模な定量調査を実施。統合分析し、多くの気付きや発見があった。

同年に静岡県で初となるコミュニティ・スクールに認定された同校は、5年生自身が「地元の川・巴川を大切にしよう」とのテーマを達成するために、地域の人たちを巻き込む「そうじ大会」を企画。同年9月から12月にかけての総合的な学習の時間で実施した。

大きな成果は5つ。

①「自己肯定感の高まり」=目的とゴールを設定し、地域と関わり合いながら「正解のない課題」に取り組み、アイデアや意見を出し合い、周囲からのフィードバックにより自信を深め、課題を一つ一つ解決して達成感を得ることで、自分の役割を認識した。そして周囲から認められることで「必要とされていること」を実感し、自己肯定感を高めていった。日頃、目立つタイプではない児童も、自分の意見・考えを伝えるようになった。

②「他者理解・共感の高まり」=リハーサル体験を通し、「机上の議論」と「実際やってみる」とでは異なるのを肌で感じ、成功させるには、みんなで協力し、コミュニケーションをとる大切さを理解した。感じる力・考える力・伝える力・聞く力といった「ことばの力」が向上し、他者理解・共感が高まっていった。

③「生きる力の高まり」=地域・社会に飛び込み、ゼロから創るものには、自分の頭の中や教室の中だけでは解決できない「想定外」が発生する。それに対しては、他者との対話を通じて自分の強みや他人の強みを理解しながら協力して解決。生きる力が醸成されていった。児童同士が足りない点を助け合うようになった。

④「先生のモチベーション向上」=教師主導から児童主導になってくると、教師自身の自己像に変化が起こった。児童らの良さを引き出すのを心掛けるようになり、ファシリテーターとしての教師力を身に付けなければと、モチベーションの向上につながった。まずは自身がやってみて、児童に投げ掛けてみようと、意識に変化が起きた。

⑤「地域のつながり活性化」=保護者も地域との関わりが増え、子供をきっかけに地域の人たちが集まり、子供の視点で地域の魅力を再発見するようになった。学校を取り巻く大人の関わりが高まるにつれて子供たちが変わり、それは地域をもさらに変えていった。

当時、同校校長だった山下由修同市立大里中学校長は、「この取り組みで子供観、教師観、地域・学校観――の3つで転換が起こった。地域を基盤とした学びによって、子供は学びの実感・使命感・達成感を得ることができ、学びが自分事になった。教師には教えることから学ぶことへの転換が起き、『子供は有能である』との児童観が生まれた。地域と学校が連携することで、『世の中には素敵な大人がたくさんいるという地域観』が芽生え始めた。まさに『地域まるごと 学校だ』と感じた」と思いを述べた。

嶋野道弘元文教大学教授は「子供の実体・本質と実態・状況を知り、そのずれに着目することが大切。子供が潜在力を発揮する機会が少ないいま、機会提供のためにも地域との連携は重要。この事例は、子供、教員、保護者、地域に変化をもたらしたもので、地域と連携した教育の効果事例として、子供たちの潜在力、自己肯定感を高めるヒントとなる」と結んだ。