教育著作権検定が来年開始へ 「現場で活用して」

子供たちに著作権を教える久保田さん(左)=ACCS提供(平成27年5月5日、東京都新宿区の芸能花伝舎で撮影)
子供たちに著作権を教える久保田さん(左)=ACCS提供(平成27年5月5日、東京都新宿区の芸能花伝舎で撮影)

教員と教員志望の学生を対象とした、「教育著作権検定」が来年から始まる。検定の創設を主導した、(社)コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の久保田裕専務理事は「教育現場で活用してほしい」と話す。

同検定は、ICT利活用教育に必要な著作権の知識を測定・評価するため、知的財産の保護活動を行うACCS、知財教育に力を入れる山口大学、大阪教育大学の3者の連携・監修のもと、資格検定試験を主催する㈱サーティファイによって創設される。

試験は平成30年2月1日から始まる予定で、受験料は5千円。主な対象として、教員養成課程の学生や、教育機関の教職員を想定している。受験資格は問わない。著作権法および関連法に関する知識、ネット社会における情報モラルなど、全30問が出題され、得点に応じてレベル認定される。

日本の教育機関は、著作権法の35条や38条などによって、著作権者の了解または許諾を得ることなく、小説や絵画、音楽などの作品をコピーして、一定の範囲で自由に利用できる。

今後、ネットの普及により、紙資料の複製にとどまらず、学校でデジタル教材やコンテンツをコピーしたり、学外へ向け授業を映像配信したりする時代が到来するといわれている。著作権に関する知識を有していないと、将来、授業が成り立たなくなる可能性がある。

ただ、学校での著作権教育は十分でないのが現状。教育の情報化に関する調査・研究を行う「日本教育情報化振興会」が26年度に実施したアンケートによると、著作権に関する研修を過去3年以内に受けた教員がいると回答した学校は、39.2%で過半数を割り込んでいる。

久保田専務理事は長年、教育現場での著作権知識の普及に努めてきた。だが、現状が改善される見通しが立たないため、検定の創設に動いたという。

久保田専務理事は「知財立国宣言から15年。情報化社会が進んでいく時代に、著作権の内容や適法範囲を知らないでは済まされない。著作権は何のためにあるのか。なぜ守らないといけないのか。先生がまず知る必要がある」と話す。

もっとも、教員の著作権意識が低いわけではない。前出のアンケートで、著作権に対する教員の意識を学校に聞いたところ、自分自身が知識を得るのが重要だと感じている教員が多いと回答した学校は、48.5%でほぼ半数を占めた。児童・生徒に対する教育内容として重要だと感じている教員が多いと回答した学校も、35.0%あった。

しかし、教員が法律に抵触している例は、校内でも見られるという。たとえば、生徒の作品に手を加える行為は、著作者の人格的利益を守る「著作者人格権」のうち、自分の意に反して勝手に改変されない「同一性保持権」に抵触する。生徒に相談せず作文を編集する行為などが、これに当たる。

また、夏休みの提出課題だった絵を生徒の許諾をとらずに掲出した場合は、著作物を公表するかどうかを決定する「公表権」とともに、無断で公衆に展示されない「展示権」も侵害してしまう。こうした事例を見つけた生徒から、指摘を受ける教員もいるという。

久保田専務理事は「『授業のため、許諾なく自由に著作物を使いたい』。そうした考えが強い教員は、著作権法や複製の問題に対し、教育権の行使を規制されているような気分になりがちなのかもしれない。著作権法は、表現の自由に対する規制法ではなく、許諾を得て他人の著作物を使う法律。つまり、作り手の利益を保護するものだ。子供たちが将来ネットワーク社会で生きていく際の武器にもなる」と強調する。

自動車業界でもソフトウェア開発が行われ、経済がソフト化していく一方で、子供がなりたい職業の上位に、プログラマーやゲームクリエイター、YouTuberが挙がるようになった。こうした時代にあって、教員に正しい著作権知識がなければ、教育を受ける子供にも知識が根付かず、表現の自由や情報の価値を知らないまま大人になってしまう懸念もある。

そうした意味でも、教員は著作権知識を向上させる必要があるだろう。とはいえ、校務が多忙で手が回らない教員がいることは想像に難くない。

久保田専務理事は「教員が忙しくて大変なのはわかっている」とした上で、「教員が著作権の知識を持てば、多様な著作物を使って教えられるようになり、教育を受けた子供たちがもっと成長するかもしれない。創作を通して表現教育を充実させ、文化に貢献するという理念をもって、教育現場で活用してほしい」と期待を述べた。

【訂正】タイトルで「教員著作権検定」とあるのは「教育著作権検定」でした。(2017.10.18)