中高生の基礎読解力を調査 主語と目的語を読み取れず

文章を読み、内容に合うグラフを選ぶ問題
文章を読み、内容に合うグラフを選ぶ問題

教科書の文章をきちんと理解できない中高生が多くいることが、このほど発表された国立情報学研究所の新井紀子教授ら研究グループの調査結果で分かった。同教授は、今のままでは「AI(人工知能)に職を奪われる」と警鐘を鳴らした。

同研究グループは、基礎読解力を測る試験法「リーディングスキルテスト」(RST)を開発し、平成28年4月から29年7月にかけて、中高生を中心に2万4617人を調査した。

テストでは教科書などの文章を読ませ、事前知識に頼らずに意味や構造を理解できているかを調べた。

その結果、文章の構造を把握する問題では、中学生の37.6%、高校生の27.9%が、主語と目的語を読み取れなかった。問題は中学校社会教科書『新しい社会地理』(東京書籍㈱)から出された。

受検者に対しては、「仏教は東南アジア、東アジアに。キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに。イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアに主に広がっている」という文章を読んでもらい、オセアニアに広がっている宗教がどれかを問うた。

正解は「キリスト教」だが、中学生の平均正答率は62.4%だった。内訳は中1(62.9%)、中2(54.7%)、中3(70.4%)。高校生の平均正答率は72.1%だった。内訳は高1(73.1%)、高2(73.5%)、高3(66.1%)。

AIがこの問題を訓練すれば、60~90%の精度を出すという。

文章から図表への対応づけを、正しくできるかも問うた。

メジャーリーグ選手の出身国の内訳に関する文章を読み、内容に合うグラフを選べた中学生は12.3%で、中学1年生に至っては9.0%にとどまった。高校生の正答率は27.8%で、高校3年生は高校2年生の37.0%より低い35.7%だった。

問題文には「選手のうち28%はアメリカ合衆国以外の出身」と書かれていた。正解できなかった生徒は、4つのグラフから、72.0%がアメリカ合衆国出身という事実を示すものを選べなかったことになる。出題は中学校社会科教科書『中学生の地理』(㈱帝国書院)からだった。

こうした結果から同研究グループは、中高生の基礎的読解力について、中学生の間に緩やかに上昇するものの、高校では上昇するとはいえないとした。一方、100%進学する公立高校では、文章の構造を把握する問題の平均正答率が85%を超えたという。

調査では、スマートフォンの利用時間や一日の学習時間、読書の好き嫌いなどを聞いたが、読解力との相関は確認できなかったという。翻ってテストの得点は偏差値と強く相関していた。

同研究グループは、教科書が読めなければ自分ひとりで勉強できず、勉強の仕方がわからなければAIに職を奪われると指摘した。その上で、「プログラミング教育を行っている場合ではない」として、中学卒業までに中学校の教科書を読めるようにすることを、教育の最重要課題に挙げた。

今回の結果に関し、同研究所はこれまでに確認を求められた内容をまとめた。

問題が不必要に難しすぎるのではないかとの指摘に対しては、難しすぎると考えていないとしている。

一部の例題で文章に曖昧性があるとの疑問については、曖昧性を正しく処理できる能力は基礎的読解力の一部だと考えているとした。

また、「教科書はそもそも読みにくいのではないか」との指摘もあったという。これについては、「検定を経た教科書を読めるかどうかは、児童生徒の進路を左右する大きなファクターだ。現在の教科書が読みにくいか否かはさておいて、検定教科書を読めるような読解力が身についていることは必要だと考える」としている。

同研究グループは今後、基礎的な読解に大きな困難を抱えている児童生徒を早期に発見し、支援する方策を検討するとしている。さらに、基礎的な読解力を決定する要因、基礎的な読解力を向上させる方策も検討していくという。

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