学校事故・事件 被害者の会が文科省に対応改善を要望

文科省に対応改善を求める内海代表世話人(右)
文科省に対応改善を求める内海代表世話人(右)

学校での事故や体罰の被害者家族らでつくる「全国学校事故・事件を語る会」は12月8日、文科省を訪れ、被害者救済の観点に立った対応を求める要望書を提出した。

国や地方の教育行政機関が行う事件・事故発生後の対応のあり方について、同会代表世話人で元教員の内海千春さんらは、被害者に寄り添った救済対応が不十分だとして、同省に対し、事後対応にかかわる教職員・研究者らの養成や、調査体制の整備などを要望した。

同省は、初等中等教育局健康教育・食育課の三谷卓也課長、同課学校安全係の高橋裕子専門官らが応じた。同課長は、教委や学校が「学校事故対応に関する指針」に則して被害者に対応していない現状の説明を受け、「愕然とした」と述べた上で、改めて周知徹底していく姿勢を示したという。

これに対し、内海さんは要望書提出後の記者会見で、仮に文科省が周知徹底しても、通達や通知、研修では限界があるとして、「強制力を持った対応が必要だ」と述べた。

被害者の立場から見た教委や学校の対応について、同会は報告書の中で、あたかも重大事故がなかったかのように振る舞い、正常な状態に戻りたがっているように映っていると指摘した。また、学校側が被害者かのように振る舞うことがあるという。

こうした事故後の対応を踏まえ、内海さんは「学校で何があったのか。当事者や遺族の知る権利を保障していくことが重要だ」と述べ、学校現場で問題の解明に当たるシステムをつくるべきだと主張した。

内海さんの長男(当時12)は平成6年、小学校で担任教員に暴行されたことをきっかけに自殺した。この小学校は問題の解明どころか、「学校を守ろう」との建前で自治体ぐるみで沈静化を図る運動を起こし、内海さんたち遺族は「村八分にされた」という。

教育現場の実態について、内海さんは「学校は謝って済むレベルを超えた問題には対応しようとしない。教員は問題を知っていても、表に情報を出さない。元教員なので現場のことは知っている。仕事が忙しくてできないのではない。触れたくない、怖いからやりたがらないだけだ」と批判し、第三者委員会での問題解明に限界があるとの認識を示した。

指導死やいじめ自死の遺族からは、特に校長や教頭の対応に不満の声が上がっている。報告書によると、不慮の事故で報告するように校長が遺族に求めたり、生徒が亡くなったことを理由に「卒業アルバムに載せない」と教頭が笑ったりした事例があるという。校長が事故後の保護者説明会で言い訳を述べ、遺族に責任を転嫁する発言を行ったとの報告もあった。

内海さんは「報道されている事案は氷山の一角。ほとんどの遺族は泣き寝入りして声を上げられない。親は子供が亡くなったとき、何があったのか知りたいのに、調査を理由に何も教えてもらえない。被害者に寄り添い、学校と合意形成を図りながら対応する体制を整えるべきだ」と述べ、孤立しがちな被害者を守る必要があるとした。

同会が要望した内容は次の通り(原文ママ)。

■被害者救済と当事者の参加・合意重視の観点に立った事後対応を実施すること。
■当事者の「事実を知りたい」という願いに寄り添った初期(基本)調査の体制整備を行うこと。
■当事者の参加・合意形成とその前提となる事実関係等の説明を重視した調査委員会の運営を行うこと。
■被害者救済の観点に立った各種相談・支援を実施すること。
■事後対応に関わる指針類等の内容及びその周知のあり方の点検・見直しを行うこと。特に「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)」と整合性がある形で、新しい「子どもの自殺が起きた時の緊急対応の手引き」を作成すること。
■重大事故・事件防止等に関する教員養成段階及び教職員研修等の取り組みの点検、見直しを行うこと。
■重大事故・事件の起きた学校及び教職員(集団)の「再生」に関する取り組みを充実させること。
■事後対応にかかわる教職員、行政職員、研究者、専門職の養成・研修を充実させること。