池田中事件で福井県議会が意見書 「日本一が目的化」

福井県議会は12月19日、教育行政の抜本的な見直しを求める意見書を可決した。教員の指導叱責が原因で、同県池田町立池田中学校の生徒が自殺した問題を受け、教員の多忙化が、子供たちに対応する精神的なゆとりを失っていると指摘。学力が「日本一であり続けることが目的化し、本来の公教育のあるべき姿が見失われてきたのではないか検証する必要がある」とした。

また問題の背景として、「学力を求めるあまりの業務多忙もしくは教育目的を取り違えることにより、教員が子どもたちに適切に対応する精神的なゆとりを失っている状況があったのではないか」と懸念を表明。全国学力調査などで上位を維持するのが、教育現場に無言のプレッシャーを与え、教員、生徒のストレスの原因になっているとも指摘した。

事件の再発防止に向け、新たな教育の方向性を示すべきだとし、▽発達段階に応じ、過度の学力偏重は避ける▽教育大綱に示された具体的方策が、現場の負担感や硬直化を招かないように改める▽同県が独自に実施している学力テストを学校裁量としたり、部活動指導の軽減化を図ったりして、教員の多忙化を解消する▽発達障害傾向の子供が増えているのを踏まえ、学校での生徒理解(カウンセリングマインド)の徹底を図る――などを提言した。

意見書の全文は以下の通り。

福井県の教育行政の抜本的見直しを求める意見書

本年3月、池田中学校で起きた中二男子生徒が校舎3階から飛び降り自殺するという痛ましい事件については、教員の指導が適切でなかったことが原因との調査結果がなされた。これを受け、文部科学省から再発防止に向けた取組みを求める通知が出されるなど、全国的にも重く受け止められており、福井県の公教育のあり方そのものが問われている事態と考える。

本来、教員は子どもたち一人ひとりに向き合い、みんなが楽しく学ぶことができる学校づくりを推進する意欲を持っているはずであるが、最長月200時間を超える超過勤務があるなど、教員の勤務実態は依然として多忙である。

池田中学校の事件について、学校の対応が問題とされた背景には、学力を求めるあまりの業務多忙もしくは教育目的を取り違えることにより、教員が子どもたちに適切に対応する精神的なゆとりを失っている状況があったのではないかと懸念するものである。

このような状況は池田町だけにとどまらず、「学力日本一」を維持することが本件全域において教育現場に無言のプレッシャーを与え、教員、生徒双方のストレスの要因となっていると考える。

これでは、多様化する子どもたちの特性に合わせた教育は困難と言わざるを得ない。

日本一であり続けることが目的化し、本来の公教育のあるべき姿が見失われてきたのではないか検証する必要がある。

国においても、主体的に学ぶ力や感性を重視する教育課程の改善等が議論されている今、学力日本一の福井県であるからこそ、率先して新たな教育の方向性を示すべきであり、痛ましい事件の根本の背景をとらえた上で、命を守ることを最優先とし「いま日本に必要な教育」「真の教育のあり方」を再考し、今後二度とこのような事件を起こさないために、下記の点について、福井県の教育行政のあり方を根本的に見直すよう求めるものである。

1 義務教育課程においては、発達の段階に応じて、子どもたちが自ら学ぶ楽しさを知り、人生を生き抜いていくために必要な力を身につけることが目的であることを再確認し、過度の学力偏重は避けること。

2 知事の定める教育大綱は本県全体の教育行政の指針であるが、その基本理念実現のための具体的方策までを教育現場に一律に強制し、現場の負担感や硬直化を招くことがないよう改めること。

3 教員の多忙化を解消し、教育現場に余裕をもたせるため、現場の多くの教員の声に真摯に耳を傾け、本来の教育課程に上乗せして実施する本県独自の学力テスト等の取り組みを学校裁量に任せることや、部活動指導の軽減化を進めるなどの見直しを図ること。

4 感情面の不安定さなど発達障害傾向の子どもが増えていることを踏まえ、医療・福祉分野との連携、家庭との連携や、教員や養護教諭に対する研修時間の確保など、学校での生徒理解(カウンセリングマインド)の徹底を図ること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成29年12月19日

福井県議会