考え議論し、生き方や実践につなげる「徳育科」

〈特集 新学習指導要領移行措置2018(3)〉
東京都武蔵村山市立第八小学校主幹教諭 嶺井 勇

■はじめに

議論し、考えを深め合う5年生
議論し、考えを深め合う5年生

本校は、2014年度から文科省の研究開発学校の指定を受け、独自の教育課程を編成。礼儀作法やマナーを指導内容に取り入れた新教科「徳育科」を創設した。「礼節を大切にし、自分に厳しく、人に優しく、主体的に集団や社会に働き掛ける児童」の育成のために、道徳科も含めた授業改善や評価、指導計画の在り方などに関する実践研究に取り組んでいる。

本校が目指す授業は、「『何を知っているか』から『何ができるか』を目指した授業」であり、「子供たちが考え、議論し、生き方や実践につなげる授業」である。徳育科の特徴は次の4点である。

1.礼法の時間

徳育科は「道徳科」と本校独自の「礼法の時間」から構成される。「礼法の時
間」は、人が生きる上で必要なルールやマナー、社会規範などを身に付け、日
常生活の実践につなげる学習である。「礼法」は単なる礼儀作法にとどまら
ず、「自分も他人も大切にしながら、より良い生活、より良い社会をつくって
いく心掛けや心配り」と定義している。内容は「あいさつ」「正しい姿勢」
「いじめを許さない」「公共の場での振る舞い」など10項目からなり、1年生
から6年生までスパイラルに指導を行う。

2.ねらいの明確化

毎時間の授業にはねらいがあり、それに即した授業が展開できるかが極めて重
要である。本校では、1単位時間で身に付けさせたい力(育てたい児童の姿)
を定め、ねらいを明確にしている。そして、ねらいの達成に有効な指導方法
(自我関与が中心の学習、問題解決的な学習、体験的な学習など)を選び、実
践している。また、「誰でもどこでもできる授業づくり」をコンセプトに、
「考えさせたいこと」「身に付けさせたい力」「中心発問」などの項目を設定
した本校独自の「授業づくりステップチャート」を作成し、活用している。

3.評価の12視点

評価は「児童が自らの成長を実感し、意欲の向上につなげるもの」「授業改善
・充実に取り組むための資料」である。本校では、授業の中での児童の変容や
深まりを見取るために、次の12の視点を設定している。

(1)道徳的価値の良さや意義を理解している。

(2)実現することの難しさを理解している。

(3)自分と違う意見や立場を理解している。

(4)自分自身との関わりの中で理解している。

(5)体験的に理解している。

(6)自分の経験や体験を振り返りながら考えている。

(7)さまざまな視点(結果や原因など)について考えている。

(8)別の立場で考えている。

(9)自律的に考えている。

(10)自分自身の問題として受け止めようとしている。

(11)自分の特徴を知り、より良くしていこうとしている。

(12)これからの自分の生き方に生かそうとしている。

このように、内容項目によらない視点を設定し、児童の変容や成長を見取る方
法を開発した。これにより、道徳の授業においても指導と評価の一体化が図ら
れ、授業改善につながる。また、通知表の所見についても、この方法で児童の
変容や深まりを多面的・多角的に見取り、記述による評価ができる。

4.実生活との関連

徳育科と実生活との関連を明確にするために、本校では徳育科の1単位時間の
後半の学習を、「生き方や実践につなげる学習」と位置付け、徳育科の学習が
他教科や日常生活等にどうつながるかを明確にして、授業づくりを行ってい
る。また、道徳教育全体計画や各学年の年間指導計画、内容を焦点化した「徳
育科の学習と他教科等との関連表」を作成している。さらに、徳育科の評価と
通知表や指導要録の「行動の記録」との関連について研究を進めている。

■道徳教育の今後の方向性

18年4月から全国の小学校でスタートする「特別の教科 道徳(道徳科)」へ
の大転換は、大津いじめ自殺事件が端を発しているといわれている。つまり、
実効性のある道徳科と道徳教育の在り方が求められているのである。これを踏
まえ、本校の研究は「生き方や実践につなげる徳育科」という視点で、来年度
から始まる道徳科の一考として、また今後の道徳教育の方向性を提案したもの
である。

本校では、今年の2月17日に研究発表会を開催する。この研究の成果を全国に
向けて発信したい。

関連記事