学校部活動とジュニアクラブの共存制度

〈特集 学校の働き方改革2018(1)〉
岐阜県多治見市教育委員会教育推進課主幹 高橋 光弘

n4働き方特集3 学校部活・多治見市教員多忙化の一因として中学校の部活動が取り沙汰される中、岐阜県多治見市が独自に創設した制度が脚光を浴びている。生徒の要望を踏まえ、教員の負担軽減を図る方策とは――。

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ある中学校での放課後。体育館にバスケットボール部の生徒たちが集合し、顧問の指導の下、パスやシュートの練習に集中して打ち込む。その間わずか20分程度。下校時間を迎えると、そのまま練習を続ける生徒と、帰宅する生徒に分かれる。残った生徒たちの部活動を見守るのは、教員ではなく社会人指導者か保護者だ。

「専門的な指導を受けたい」「休日は部活以外に時間を割きたい」。こうした生徒の要望に応えるため、多治見市では2003年、学校教育の「部活動」と社会教育の「ジュニアクラブ活動」に分ける制度を導入した。生徒はどちらかを選ぶことになる。

「部活動」の場合は、体験入部を経て、5月の連休後に学校へ申告して入部する。「クラブ活動」の場合は、1月の入学説明会で、生徒が興味を持ったクラブと連絡先を紹介する。入学後すぐに入る生徒もいれば、正式に部活動に入部した際に入る生徒もいる。申告はクラブの代表者が受け、学校では受けない。クラブの代表は原則、保護者が務める。

クラブの社会人指導者は代表者によって任命され、各種目の経験がある地域住民らが務める。原則ボランティアだが、謝礼金および交通費や弁当代を出すクラブもある。前出のバスケット以外にも、サッカー、野球、卓球、ソフトテニス、柔道などがある。

■開始当初は反対意見も

17年度、クラブに加入した生徒は全体の約50%。加入すれば中学校体育連盟大会と協会主催大会の両方への参加が可能になり、県大会や東海大会、全国大会に出場した生徒もいる。全国大会出場を市長や教育長に報告する生徒の姿は、とても生き生きとしていた。教員の人事異動に左右されることなく、継続的に専門的な指導を受けられた効果だと捉えている。

本制度を開始してから数年間は反対意見もあった。保護者の負担が増えることや、社会人指導者が勝利至上主義に走る可能性に対し、市議会で取り上げられ、懸念が寄せられた。こうした課題を、学校、保護者、市が共に検討し、制度のよりよい運用を模索し続けてきた。その結果、次第に市民の間でも定着してきた。

■負担軽減の効果

本制度の目的は当初、部活動を充実させたい生徒のやる気を生かし、他の活動を優先させたい生徒の時間も保障することにあった。翻って今日では、社会的な問題になっている教員多忙化の対策として注目され、16年度から取材や視察を受ける機会が増えた。

「部活動」は教員の勤務時間内で終わり、「クラブ活動」は平日放課後も土日祝日も行う。教員の中には、義務ではなく自分の意思でクラブの指導に当たる者もいるが、大半は「部活動」以外の時間を自由に使えるようになった。現場からは「授業づくりなどの仕事に集中できる」との声が上がっている。

こうした取り組みが、17年度の全国学力・学習状況調査の結果にも反映されたと捉えている。国語、数学のA・Bとも、わずかだが全国の平均正答率を上回った。土日に3時間以上学習している生徒や、好きな授業があると答えた生徒の割合も全国平均を上回った。

■地域とのつながりを実感

地域との連携は、これまでも重要であるといわれてきた。近年はさらに踏み込み、コミュニティ・スクール構想も具体化し、地域と共に進む学校が求められている。学力調査でも地域社会とのつながりに関して以下の質問があった。

・地域社会などでボランティア活動に参加したことがあるか

・地域の大人に勉強やスポーツを教えてもらったり、一緒に遊んだりすることがあるか

いずれの質問も「ある」と回答した本市の生徒の割合は、全国平均を大きく上回った。地域でまちづくりを推進する関係者からは「地域の行事に参加する中学生が多くなってうれしい」という声が届いている。本制度が直接の要因とは断定できないが、生徒と地域住民とのつながりが深まってきたことを大変うれしく思う。

本制度は、保護者や地域の理解と協力で成り立っている。多方面から注目され、高く評価されているが、完璧な制度という認識は持っていない。保護者の負担減、指導者の資質向上および確保、休廃部のリスクを招く生徒数減少への対応など、課題は残る。

今後も「部活動」と「クラブ活動」の連携を密にして、学校や保護者、地域と協力し検討しながら、生徒がよりよく活動できるよう改善していきたいと考えている。