教員の働き方改革 全ての関係者が対策に取り組んで

〈特集 学校の働き方改革2018(2)〉
n5働き方特集2 教員の働き方改革・諸富明治大学文学部教授 諸富 祥彦

■長く放置されてきた「働き方」

教員の働きすぎ、忙しすぎは、限度を超えている。いまや、学校はある種の「ブラック企業」と化している。そういう認識が一般社会の中でも共有されつつある。

「教師を支える会」代表として、多くの教員の悩みを聞くことを通して、私はこの問題を実感していた。政府の「働き方改革」の波が押し寄せたのであろうか。長年多くの人が知りながら放置されてきたこの問題が、ようやく本腰を入れて取り組まれることになりそうだ。

教員勤務実態調査(2016年度)の速報値によれば、次のような実態が示されている。「小・中学校ともに年齢階層が若いほど勤務時間が長い」「どの年齢階層でも10年前と比較して勤務時間が増加している」「小学校については、授業、学級経営の時間が増加している」「中学校において土日の部活動に従事する時間は、10年前よりもほぼ倍増(1時間6分から2時間10分)している」「年齢が若いほどメンタルヘルスの状態が不良である」「部活動に必要な機能を備えていない場合、メンタルヘルスの状態が不良となる傾向がある」「小学校では休憩時間が確保できず連続勤務になっている」などである。

こうした「学校のブラック化」ともいえる現実を受けて、中教審は17年6月に文科大臣から「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」の諮問を受け、同年7月に初等中等教育分科会に「学校における働き方改革特別部会」を設置。以降、学校現場、教育委員会、有識者というそれぞれの立場から議論を進めてきた。特別部会では、委員から教員の勤務実態について「直ちに改善が必要な差し迫った状況がある」との認識が示され、活発な議論を経て、その「中間まとめ」が報告された。

■教員の献身に支えられる「日本型学校教育」

キーワードの一つは、「日本型学校教育」である。日本の教員は、学習指導のみならず生徒指導の面でも主要な役割を担い、児童生徒の状況を総合的に把握して全人格的な完成を目指す教育を実施している。このいわば「日本型学校教育」は、国際的にみても高く評価されており、それはわが国の教員が子供への情熱や使命感を持ち、献身的な取り組みを積み重ねてきた結果初めて成り立つものであるという認識が示されている。「日本型学校教育」では、教教員のわが身を顧みない献身的な努力を前提としたものであり、「子供たちのために」という強い使命感と責任感から、児童生徒に関わるあらゆる業務を自らの業務とみなし、結果的に業務の範囲を拡大し続けてしまったのではないか、と分析されている。

こうした状況を踏まえた「中間まとめ」の内容もおおむね納得ができるものになっている。一つは「給特法」の存在も相まって、教員の勤務時間を管理するという意識が、管理職や市町村教育委員会でも希薄だったのではないかと指摘されている点である。管理職を含めた教職員一人一人が、勤務時間を意識した働き方を行うべく、意識を変えていくべきであるとの提言がなされている。

共感したのは、「学校における働き方改革は単に帰宅時間を早めれば実現するものではない。すなわち、学校および教員の業務の総量を減らさずして、在校時間の短縮を図ろうとしても、家に持ち帰る仕事が増えることにつながり、根本的な解決にはならない」という指摘がなされている点である。教員の働き方改革は、ともすれば「教員一人一人の意識改革」に帰結されやすい。「中間まとめ」では、教員個々の取り組みで解決できるものではなく、校長や教育委員会を含め、全ての関係者が対策に向けた取り組みを実行しなければ、実現できないのであると指摘されている点が重要である。

■主体性の尊重と待ったなしの状況

また、「学校における働き方改革は、押し付けではなく、基本的には各学校の主体性を大事にしながら行うべき」ものである、との指摘もなされている。この問題の急所はここであろう。「各学校の主体性の尊重」と「待ったなしの状況における教員の働き方改革」――前者が後者の一斉の断行を阻む大きな壁になっていることもまた現実である。しかし「各学校の主体性の尊重」をないがしろにして、例えば「○曜日は一律に○時○分に退勤」と命じても、持ち帰りの仕事や翌日の仕事が増えるだけであり、根本的な解決には至らない。「各学校の主体性の尊重」と「教員の働き方改革」の推進――この二つの相矛盾する問題にどうバランスをとって取り組むかが、教員の長時間勤務の是正における難所ではないだろうか。

(「教師を支える会」代表)

 

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