スクールソーシャルワーカー活用事業 連携を通じて教職員の資質向上にも寄与

〈特集 学校の働き方改革2018(5)〉
滋賀県教育委員会事務局幼小中教育課指導主事 鹿取 博貴

n5働き方特集5 SSW・滋賀県いじめや不登校をはじめとする学校不適応行動には、学校・家庭・社会環境など子供を取り巻く環境が大きく影響している場合があり、課題解決を図るためには、本人に直接働き掛けるだけではなく、本人を取り巻く環境の調整・改善に取り組むことが必要不可欠である。

そこで本県では、教職員の福祉的な視点が子供たちへの効果的な支援を生み出すのではないかとの仮説を検証すべく、2005年度から研究事業を開始した。そして、文科省が08年度から「スクールソーシャルワーカー活用事業」を開始したことを受け、本県でも10年度から本格的に進めていくこととなった。本事業では、スクールソーシャルワーカー(SSW)を配置することで、福祉的な支援方法を学校にも取り入れ、個々の課題解決を目指すのはもちろんのこと、教員のアセスメント力と環境調整能力を高め、指導・支援の充実を図ることも目的にして、展開している。

■支援の具体的な内容

本県のSSWの具体的な業務には、以下のようなものがある。

▽学校不適応児童生徒およびその児童生徒が置かれた環境への働き掛け▽関係機関等とのネットワークの構築、連携・調整▽校内チーム体制の構築、支援▽保護者、教職員等に対する支援・相談・情報提供▽教職員等への研修活動▽学校不適応児童の状況把握

■好転した事例

ここで、SSWが関わることで事態が好転した具体的な事例を紹介する。

〔小学生が家庭内と放課後児童クラブで暴言・暴力を起こしたケース〕
(1)母親との面談と通告の依頼

教職員から対象児童の母親を紹介され、面談を行う中でアセスメントしたところ、本児の特性から生じる集団適応困難とともに、両親による心理的・身体的虐待、過保護傾向などの不適切養育が背景にあることが判明したため、学校に対し虐待通告を行うよう依頼した。

(2)定期的なケース会議の開催

対象児童の対応に苦慮している放課後児童クラブの指導員を含めて、時には母親も同席の下、ケース会議を開き、アセスメントと支援のプランについて共通理解を図った。

(3)要保護児童対策地域協議会が開くケース会議への参画

要保護児童対策地域協議会において、母親面談の状況を報告したり、効果的な連携体制を練ったりした。

(4)関係機関との連携における体制づくりのサポート

医療機関や警察署、教育委員会等の複数の関係機関が関わることで、ケースに対する認識にズレが生じる恐れがあるため、アセスメントやこれまでの経緯を文書に整理して共通理解を図った。

――これらの活動により効果的だったことは、多くの機関との連携体制が整い、対応の仕方について共通理解ができたことと、効果的な医療受診、母親のメンタルケア、虐待行為が軽減されたことである。その結果、本児の行動が悪化するのを防ぐことができた。

■成果と所感

本事業を推進していくに当たり、次の2点について成果が表れてきたように思う。

1点目は、校内組織体制の充実である。実践事例でも述べたように、ケース会議を開催することにより、参加者の共通理解を図ることができ、また、支援体制の役割分担を行うこともできた()。これにより、目の前の「困っている子」に対して、教職員が一人で抱え込んで対応することなく、組織として対応することができるようになり、より的確な支援につながった。

2点目は、教職員の資質向上である。教職員がSSWと関わる中で、子供たちの内面の課題のみに焦点を当てるのではなく、福祉的な視点から子供たちを取り巻く環境にも着目し、その調整や改善を図れるようになるに従い、課題の未然防止や初期対応がスムーズに行われるようになってきた。

本事業では、SSWが全てを担うのではなく、教職員と共に活動する中で児童生徒の課題を解決に導くことを目的としているが、SSWを配置した学校からは、「関係機関との連携がスムーズになった」「課題を把握してからの対応、解決が早くなった」などの意見に加えて、「学校として取り組もうとする支援について、SSWに同意してもらえると心強い」といった意見が出ていることからも、教職員の多忙感の軽減はもちろんのこと、精神的な負担の軽減にもつながっているのではないかと感じている。

■今後の展望と提言

本事業を拡充していくためには、SSWの人材確保が重要である。さらに、SSWの人材育成についても、効果的な事業を展開していく上での大きな課題であると考えている。

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