いじめによる後遺症 生涯にわたって身心に悪影響

研究によって明らかとなったいじめの影響を説明する滝沢准教授
研究によって明らかとなったいじめの影響を説明する滝沢准教授

いじめの被害経験は、生涯にわたって心身にダメージ――。3月15日に東京都千代田区の参議院議員会館で行われた、「いじめ問題の実態を知り理解を深めるための勉強会」(NPO法人ジェントルハートプロジェクト主催)では、「いじめによる子供の身心の『隠された』傷と後遺症」と題した講演が行われた。臨床心理学が専門の滝沢龍東京大学准教授は、子供の頃にいじめを受けた経験が、生涯にわたって精神や健康などに悪影響を与えていると指摘した。

イギリスでは1958年のある1週間に生まれた子供たちを対象に、生育環境や健康状態、家族関係などを追跡するコホート調査を実施している。同准教授は、このコホート調査のデータを基に、子供の頃の虐待などの逆境体験が大人になったときに及ぼす影響を調査する研究グループの一員として、いじめに着目して分析を行った。

その結果、いじめの被害にあった子供が大人に成長したときまでの追跡調査では、少なくとも50歳まで、対人関係や経済的困窮、QOL満足度などで影響が及ぼしていることが明らかになった。例えば、45歳の時点で、うつ病や不安障害、自殺念慮で精神科の診断を受ける頻度が有意に高かった。心血管疾患の炎症リスク指標や肥満度でも、有意に高い結果が出た。対人関係でも独身だったり、友人付き合いが希薄だったり、周囲に頼れる人がいなかったりする傾向がみられるなど、多くの指標で、幼少期のいじめられた経験が、その後の人生に、長期にわたってダメージを与えているのが分かった。

一方で、いじめにあった全ての人が悪い結果になっているわけではなく、母親や兄弟との良好な関係は、こうした悪影響から子供を守るのに有効であるのも判明した。こうした支持的な人間関係が、いじめによる見えないダメージも癒やしてくれる可能性があるという。

同准教授は「いじめによる影響が統計的に明確に示された。この結果は、解析をしながら自分自身でも驚いた。いじめをゼロにするのは難しいが、環境要因は変えることができる」と話し、いじめ加害者に対する予防対策、いじめ被害者に対する予防対策を見出していくための実証的な学術研究の必要性を強調した。同准教授は現在、こうしたエビデンスに基づいた予防教育プログラムの効果研究に取り組んでいる。