曖昧な法定義が壁に いじめ認知件数を巡る調査研究

法における定義の曖昧さが、「いじめ」の認知件数の信ぴょう性を損ない、重大ないじめの見落としにつながる可能性がある――。敬愛大学の覚正豊和教授らはこのほど、いじめの法定義と認知件数を巡る調査研究結果を公表した。いじめの認知件数に大きな地域差がみられるのは、自治体ごとにいじめの基準が異なるからであり、基準が異なるのは、いじめに関する法律が抽象的であるためだと分析。自治体が実施するアンケートでは、その場限りのけんかやふざけ合いもいじめとして報告するケースもみられ、「諍(いさか)い」の中に本来対処すべき「いじめ」が埋没する恐れがあると指摘している。

いじめ認知件数は都道府県により大きな差がみられることから、覚正教授ら共同研究チームは、認知のきっかけとなるアンケートの内容・実施方法などについて、認知件数上位の千葉県、宮城県、京都府を調査。3府県に共通する特徴は「いじめの質問項目が具体的・広範に及んでいる」点であったという。

例えば仙台市の小学校低学年用のアンケートでは、「からだやことばづかいなどをひやかされたり、からかわれたりする」「いやがっていることを言われたり、いやなよびかたでよばれたりする」と具体的に列挙している。仙台市・京都市では総認知件数のうち低年齢層が占める割合が高く、年齢が上がるほど低くなる傾向にあるが、これはいじめの実態を反映しているだけでなく、アンケート対象の子供たちが成長に伴い「『いじめ』と単なる『諍い』とが区別できるようになった結果」と分析。また、「いじめ」なのか「諍い」なのかが曖昧なまま、すべて「いじめ」として認知される結果につながっているのではないかと推察している。

基本法である「いじめ防止対策推進法」は、具体的ないじめの認知基準や対策を地方公共団体に委ねている。同教授は、この法定義の曖昧さがアンケートや認知件数における曖昧さにつながっており、「いじめ」が「諍い」に埋没してしまうことで、限りあるいじめ対策の資源を有効に活用できなくなると指摘。その上で、▽法における定義の明確化▽いじめの態様の具体化、全国的なアンケート内容の統一――を提言している。