津波訴訟二審も市と県に賠償命令 問われる危機管理マニュアル整備

防災学習教材「南海トラフ地震に備えちょき」(高知県)
防災学習教材「南海トラフ地震に備えちょき」(高知県)

東日本大震災の津波により犠牲となった宮城県石巻市立大川小学校の児童74人―、その犠牲は避けられなかったのか。児童23人の19遺族が市と宮城県に約23億円の損害賠償を求めている。26日、仙台高裁は訴訟の控訴審判決を言い渡し、市などによる震災前の災害対策に関する過失を新たに認定、一審に引き続き被告の法的責任を認め、約14億3600万円の賠償支払いを市と県に命じた。

仙台地裁での一審の争点は、教員が津波を予見できたか。津波が学校を襲う約7分前には、市の広報車が高台への避難を呼びかけており、より高い標高の裏山に避難誘導することができたのに教員らがこれを怠った、と指摘。控訴審ではそれに加え、震災前の防災体制が適切であったか、津波に対する危険認識はあったかなどが争点となり、主に市と県の事前の備えが問われた。

原告側は、当時の校長や市教育委員会に、近隣地域の危険を調査し、津波避難に対応した危機管理マニュアルを整備する義務があったと主張。被告側は、津波に関するこれまでの記録や、地域住民の認識などから、津波襲来は予見できなかったとし、同マニュアルは地域の実情に応じたもので、内容に不備はなかったとしている。

今回の判決により、一審に引き続き二審でも、学校側の法的責任が認められることとなった。二審で原告側が勝訴するのは、同県東松島市立野蒜(のびる)小学校の被災をめぐる仙台高裁判決に続いて二度目。こうした判決は、危機管理マニュアル整備の重要性を浮き彫りにしたと言える。

危機管理マニュアルについては、文科省が今年2月に「学校の危機管理マニュアル作成の手引」を作成。従前の参考資料を基に、「学校の危機管理マニュアル」に基本的な対応方法や留意点等を大幅に追記して改訂したもので、同手引を活用しながらマニュアルの作成・見直しを行うよう各学校に求めている。

また、各都道府県においても、自然災害から命を守るためにさまざまな取り組みが行われている。

東京都では、平成21年度から毎年、総合的な指導資料である「安全教育プログラム」を作成し、都内公立学校の全ての教員に配布している。全ての子供たちに、危険を予測し回避する能力や、他者などの安全に貢献できる資質・能力を身に付けさせることがねらい。平成30年度版として第10集が作成されたことが4月20日に発表された。

同プログラムは、子供の発達の段階に応じ、危険回避や安全確保のためには具体的にどのような内容を指導するべきか明確にしたもの。指導を系統的・計画的に進めるため、年間指導計画を学校種ごとに示し、指導を行う場・時間、内容と方法、計画・実施におけるポイントを示している。

また高知県では、南海トラフ地震に備え、防災学習教材「南海トラフ地震に備えちょき」を作成、配布。同県では「最大クラスの南海トラフの巨大地震が、いつどこで発生しても、子どもたちを一人も死なせない」と宣言。平成25年に安全教育の指針として「高知県安全教育プログラム」を策定し「子どもたちの命を守る教育」の推進に取り組んできた。同教材はその一環。スライド形式になっており、シナリオを用いながら各学校で授業などに活用することができる。クイズも取り入れ、高知県で過去に発生したチリ地震による津波被害などにも触れながら、南海トラフ地震の想定や新たに得た情報等をもとに、自然災害から命を守る方法、避難生活の具体的な内容などについて指導している。

同教材では、「東日本大震災を経験した人々が伝えたいこと」として、「ここなら津波は来ないだろうと思い込むのは危険!」「過去の津波経験がマイナスに働くことがある!」「安全な場所を自分で判断できるようにしておく!」と訴える。

大川小では74人の児童と10人の教職員が命を落とした。被害が繰り返されることのないよう、過去の教訓を踏まえ、危機管理体制の整備や安全教育の推進を行っていくことが一層求められる。