フィンランド教育の成功要因 政権交代でも骨組み変えず

登壇した今井教授(左)とレヘティネン教授

慶應義塾大学環境情報学部の今井むつみ研究室は6月3日、東京都中央区の内田洋行本社で、「フィンランドの教育に学ぶ ~学力を支える社会とは~」をテーマにイベントを開いた。登壇したトゥルク大学のエルノ・レヘティネン教授は「1970年代に決めた教育政策の骨組みを政権が交代しても変えずに進めたのが、フィンランドの教育が成功した要因だろう」と述べた。

同教授は冒頭、「フィンランドでは教育が政治の中でも社会の中でも、重要な存在として認識されている」と話し、教育制度が社会の発展に寄与してきた点を強調した。

フィンランドがPISA(国際学習到達度調査)をはじめとした国際学力調査で、非常に優秀な成績を収めている背景としては、教育の質と平等性の強い結びつきを挙げた。教育改革前のグループと教育改革後のグループを比較すると、教育改革後のグループは親の学歴とは関係なく、高等教育を受けている人が多いという。

今井教授も「地域や家庭の経済状況にかかわらず、誰もが平等に教育を受けられるということが非常に重要。それが教育政策の根幹として実現されているのがフィンランドだ」と続けた。

また、レヘティネン教授は、かつて最貧国だったフィンランドが教育改革後から徐々に経済成長してきた経過を示し、「最新の研究では、教育制度の発展によるヒューマンキャピタル(人的資本)の増加が経済発展の主な要因と分かっている」と述べた。

同教授によると、フィンランドで教員になるには、幼稚園を除く全ての教育段階において、3年間の大学と2年間の大学院を卒業する必要がある。採用倍率も高く、教員が医師と同じくらい尊敬される存在だという。同教授は「フィンランドの小・中・高・大で寝ている児童生徒を見たことがない」という。

教授の逐次通訳を務めた慶大3年の女子学生も、フィンランドに留学した高校時代を振り返り、「日本では考えられないくらい教員の地位が高いことに驚いた」と話した。

同教授は政治と教育の関係についても言及した。ヨーロッパの国々では政権が変わると教育も変わってしまうことがあるが、「フィンランドでは1970年代に決めた教育政策の骨組みを政権が変わっても変えず、緩やかに進めてきた。これがフィンランドの教育が成功した要因だろう」と述べた。さらに、財政投資が潤沢だからといって教育効果が高いわけではない点も強調した。

ICT教育については、フィンランドで過去20年間、かなり投資してきたものの、効果が乏しかったという。加えて、現場の教員らも効果を感じなかった。

今井教授は「学びは熟達への過程だ。ネット先進国でもあるフィンランドで、こうした結果が出てきた。一つの参考になるのではないか」と話した。