暗記型教育よ、さようなら 話題の米映画製作者が来日

麹町中学校で開かれた教育イベント。右端がテッド・ディンタースミス氏

授業はつまらないより楽しいほうが断然いいに決まっている――。学校づくりに立ちはだかる課題を解決するための教育イベントが6月10日、東京都千代田区の区立麹町中学校で開かれ、全国から約170人の教員らが参加した。

保護者の会、FutureEdu Tokyoの主催。米国の教育映画「Most Likely To Succeed」の製作者であるテッド・ディンタースミス氏が初来日したのをきっかけに映画上映、講演、シンポジウム、分科会を組み合わせた企画を立てた。課題解決には①子供が授業に退屈していないか②授業が実社会の役に立っているか③授業の目的を子供が理解しているか――を繰り返し検証しなければならないことをイベントを通じて確認し、これからの学校改革に生かすことを参加者らは誓い合った。

映画「Most ――」は子供の自律性、創造性に焦点を当てた話題のドキュメンタリーで、2015年の米サンダンス映画祭で公式上映された。チャイムが鳴らず、授業時間も決まっていない米カリフォルニア州サンディエゴの公立チャータースクール、ハイテク・ハイ校の革新的取り組みを取り上げ、AI(人工知能)を含めた今の技術革新に教育が追い付いていない現状を告発している。

ディンタースミス氏は講演で、暗記に偏った従来の学習スタイルはすでに時代遅れだと批判した。「私たちは産業社会の中でロボットになるように教育され、暗記、反復、指示に従う従順さの三つを徹底的に教え込まれてきた。本物のロボットが私たちの仕事を奪う時代に、私たちは何をすべきか。単純な決まりきった仕事はこの20年のうちになくなる」と指摘し、「子供にとって退屈な暗記や知識の蓄積、データの探索はAIに任せておけばいい。今こそ、教育の在り方を根本的に変えていかなければならない」と問題提起した。

続くパネルディスカッションにはディンタースミス氏に加え、草の根の教育改革に取り組む麹町中学校の工藤勇一校長、都立武蔵高校・付属中学校の山本崇雄指導教諭、同志社中学校の反田任教諭がパネリストとして参加。子供の興味や関心、自律性を奪う教育の現状について熱い議論を繰り広げた。

工藤校長は18年度から定期考査と宿題を全廃し、固定担任制の廃止に踏み切った麹町中の取り組みを踏まえ、「自分で考え自分で決められる、自律した子供を育てるのが目標です。それを阻むものを壊していくことが大切」と述べた。

山本教諭は「自分で折り合いを付けながら、より良い選択ができる子供にしたい。授業と子供たちを社会につなげることを先生が本気で考えなければならない。その時、参考になるのが、高い倫理観と自己修正能力を表すパブリック・リレーションズの考え方。どんな子供にしたいかを、ぜひ隣にいる先生と一緒に考えてみましょう」と呼び掛けた。

生徒1人に1台のタブレット型コンピューターを14年度に導入した同志社中学校。英語の「聞く」「読む」「話す」「書く」のレベルアップに活用する反田教諭は「生徒一人一人に合った学びの環境を提供していくのが教師の役割。しかもそれは、ずっと学び続けられる環境でなければいけない」と訴えた。

ディンタースミス氏は日本人パネリスト3人の意見に賛同しながら、「大学を出ても就職先がない時代になりつつある。大学入試にたくさんの時間を割き、何百万円もの学費を大学に払っても職は得られない。子供にとってベストは何かを教育者は真剣に考えないといけない。『どこに進学したいの』と聞くのではなく、『この世界をどうしたいの』と子供に聞くことだ。そうすれば子供は自律性と創造性、協働性と共感力を発揮する。暗記型の学習から解放され、自分で学び始める」と締めくくった。