医学的根拠に基づく診断を 虐待による頭部外傷で声明

揺さぶりや床などに打ち付けられる虐待行為によって乳幼児が受ける頭部外傷(AHT)に関して、日本小児科学会は米国小児科学会、欧州小児放射線学会など欧米の6学会と共同で合意声明を発表した。近年、虐待が疑われる多くの裁判で、乳幼児が負った頭部外傷に対し被告人側が医学的根拠のない仮説を主張していると指摘。虐待を受け死亡・後遺障害を負った子供の権利を守り、医学的判断からかけ離れた仮説が裁判を混乱させることのないよう、エビデンスに基づくAHTの診断と区別するよう訴えている。

声明によると、AHTは強い揺さぶりや骨に伝わるほどの力が加えられることで起こり、同時に硬膜下血腫や眼底出血、肋骨(ろっこつ)骨折などもみられるのが特徴。2歳以下の乳幼児が死に至る頭部外傷の要因とされている。虐待か事故かの判断は、乳幼児の病歴や診察、CTスキャンなどの画像、検査に基づき、複数機関がチームで連携して総合的に行う必要がある。

しかし裁判においては、死亡した乳幼児にAHTの特徴的な症状があったとしても「嘔吐(おうと)物を誤えんして窒息した」「生まれつき存在した硬膜下血腫が再出血しショック状態に陥った」などと、弁護側の医学証人がなんら実証されていない仮説を持ち出し、事故による死亡を主張するケースが後を絶たないという。

厚労省の子供虐待に関する検証委の報告では、2015年度に虐待(心中を除く)により死亡した子供は52人。このうち30人が0歳児(57.7%)で、直接の死因は頭部外傷(17.4%)が最も多く、加害者の多くが実母だった。重症事例も同様の傾向にあった。一方で、乳児が外傷性急性硬膜下血腫で死亡し、母親が乳児を落としていた事実を確認しながらも、事故の可能性が否定できないとして虐待死と認められない事例もあった。

AHTは外側の症状だけでは判断できず、事故と虐待の鑑別は困難とされる。声明では、AHT診断はあくまで医学的エビデンスに基づく診断であり、加害者側の意図の説明や、殺人かどうかを判定する法的な診断ではないと警鐘を鳴らしている。