快挙から学ぶ学校経営 勝因は自律、W杯サッカー

サッカーW杯ロシア大会の初戦で6月19日、日本代表が南米の強豪コロンビアに2―1で競り勝った。W杯で日本が南米勢に勝つのは史上初めて。ハリルホジッチ氏の監督電撃解任からわずか2カ月で、「サムライ」と称される日本イレブンは歴史的快挙を成し遂げた。

最大の勝因はトップ更迭の逆境をバネにしたイレブンの自律と海外で活躍する選手のグローバル化事情だった。いずれも学校経営の課題と目標に密接につながっている。

「サムライではなく、足軽だ」。新監督の西野朗氏は国際親善試合に2連敗した際、スポーツ関係者からこんな陰口をたたかれていた。W杯前最後の強化試合となった12日のパラグアイ戦を辛うじて4―2で勝ったものの、得点力不足と守備の乱れに対する不安は消えなかった。

19日の先発メンバーは、11人のうち10人が海外組。監督の西野氏を含めると国内組はわずか2人しかいない。グローバルな勝負勘と駆け引きは、監督よりも選手の方が勝り、国際経験が少ないのはむしろ監督の方だ。ポジション争いが熾烈(しれつ)なフォワードの選手が海外組に次々と誕生しているのは、グローバル化による変化と位置付けられる。世界が注目する国際舞台でゲームプランを実行する権限と責任が監督から選手へ分与された結果、監督の目指すサッカーと選手の希望するサッカーが一致したのが対コロンビア戦だった。「全員で攻め、全員で守る」「これまで培ってきたことを全部出す」。教える側の監督と学ぶ側の選手に協働が成立し、主体的・対話的で深い学びが実現した。

日本イレブンの自律を示すデータがある。19日の試合のシュート数だ。コロンビアの8本に対し、日本は14本。そのうち6本がゴール枠を捉えていた。コロンビアが枠を捉えたのはわずかに3本。日本イレブンが全員守備を意識した結果だ。今でも「日本人はシュートを打ちたがらない」というのが国際サッカー界の定説だ。リスクが高いシュートよりもリスクが低いパスを好む、失敗をいつも恐れる、個よりも組織を優先する、目立つことより控えめを善しとする、教えられたことしかできない性質がある、引き分け狙いに価値を置く――が理由に挙げられ、定説は集団主義を優先する日本文化論として論じられることが多かった。選手個人が自ら決断し自ら行動することでしか生まれないゴール。19日の歴史的快挙はイレブンの自律を証明し、他律を完全に解き放った。

もう一つ見逃せない自律の例がある。コロンビアの得点に直結するフリーキックを与えた長谷部選手の反則行為だ。誤審が疑われる審判の判断にもかかわらず、日本イレブンは誰も悪態をつかなかった。それだけでなく、審判と対戦相手に敬意さえ漂わせていた。これは「武士道」を著した新渡戸稲造の考える道徳の在り方に結び付く。同点に追い付かれた日本イレブンは自陣ですぐに態勢を整え、凛(りん)として試合再開に備えた。

卑怯(ひきょう)な振る舞いをしてはなりませぬ――。昔、会津藩士の子弟が学んだ「什(じゅう)の掟」だ。これに沿った行動をロシア・サランスクで見せてくれた日本イレブンが「サムライ」の称号を名実共に手に入れた瞬間は、外国語と道徳の教育充実を掲げる新学習指導要領の時代の中にあった。(編集委員・谷俊宏)