子供ファーストの対策を 熱中症、計画優先を見直す

熱中症の疑いで児童生徒が学校から救急搬送されるたびに「安全安心な学校でなぜこうも起きるのか」と憤りを感じてきた。

子供の命を軽視したわけではないのに、学校の行事に追われ、計画に穴をあけたくないと焦る学校関係者は「子供最優先」の選択ができなかった。そう思えてならないのは、結果的に学校の行事と計画が優先されて、事故が起きてしまうからだ。

7月18日に宮城県名取市の公立小学校で起きた児童38人の救急搬送騒ぎも同じだ。熱中症を引き起こした空撮は市制60周年記念の一環で、同日、市内の公立小・中学校で企画されていた。「中止を訴えるのは困難だった」と市内の中学校で担任を務める教諭は証言する。教諭の勤務校でも空撮は実施された。愛知県豊田市で校外学習後に児童1人が亡くなった事故を知って不安を抱き、学年主任に中止を訴えようかと思案した。「市教委がやると言っているのに、うちだけ延期できないね」「今日中止にしても生徒にさせることが何もない」と管理職が話しているのを耳にし、断念した。

教諭によると、子供たちは空撮そのものを楽しみにしていた。教員や保護者は、東日本大震災からの復興を印象付ける空撮写真集の完成に期待を寄せていた。空撮の計画は関係者の期待と善意で進められていた。空撮写真集は9月末の配布予定だったため、撮影をむやみに延期できない事情があった。たとえ延期をしても、気温はさらに上がる可能性もある。スケジュールが詰まっている限り、空撮の中止や延期は選択肢から外れる。教諭のクラスでは数人の生徒が撮影前に体調不良を訴え、保護者が迎えに来た。撮影にブレーキを掛ける最大のチャンスは結局、生かせなかった。

「私の学校では事故は起きなかったが、可能性はあった。愛知県の事故も、他人事とは思えない」と教諭は話す。

東京都立高校では7月19日に生徒10人が病院に搬送された。校長によると、全校生徒を対象に体育館で開いた詐欺被害防止の講演会で熱中症騒ぎが起きた。大型扇風機3台を設置し、生徒には状況に応じて会場を出たり給水したりすることを認めていた。校長は「判断が甘かった。大変申し訳ない」とうなだれる。

教委で指導主事を務めていた頃、住民や保護者から「熱中症の危険があるのに、夏の行事をなぜ中止しないのか」という問い合わせや苦情を受けた。市全体の事業に関わる活動や、外部講師を招いての講演会、安全指導など、スケジュールが前もって決められている行事については、延期・中止の判断が難しい場合が少なくなく、学校で十分な対策を講じていることを丁寧に説明した。しかし、納得してもらうのは難しかった。「教室で自由にさせていればいい」と乱暴に言われたこともある。それを許せば学校の教育活動とはとうてい言いにくくなる。

ではどうするのか。子供ファーストに立ち返ることだろう。取り越し苦労で終わっていい。熱中症で死者が出ることを思えば、杞憂(きゆう)で構わない。教員が判断を間違えることはあっても「子供最優先」の果ての間違いなら、子供は支持してくれるだろう。「子供の熱中症は想定外」と反省を口にするよりは、「計画・スケジュールの中止・延期は想定内」と胸を張った方が保護者は受け入れてくれる。(小松亜由子)