学校教育の大黒柱の腐敗 髙橋局長の責任は重い

インタビューで語る髙橋初中局長(2018年5月撮影)

元コンサルタント会社役員の谷口浩司被告の黒いネットワークは一体どこまで文科省を侵食しているのか――。前科学技術・学術政策局長の佐野太被告、国際統括官の川端和明被告の逮捕・起訴という前代未聞の汚職事件は、別の幹部複数も谷口被告から高額な供応接待を受けていたことが省の内部調査によって明らかとなった。9月21日、谷口被告から接待を受けていたとして、戸谷一夫事務次官、髙橋道和初中局長、義本博司高等教育局長の3人が懲戒処分となり、戸谷事務次官と髙橋局長は引責辞職に追い込まれた。

髙橋局長は辞職直後、記者団に対し持論を展開した。

「(教育課題への対応を)しっかり進めるためにも、むしろここで私が身を引いて、新体制でしっかり進めていく必要があると考えた」「文部科学行政に対する信頼が大きく揺らいでいる。初中局長というのは、学校教育、道徳教育をはじめとする義務教育を担当する。倫理においては一段高い責任を求められる。そういったことを総合的に勘案して、この職務にとどまるべきではないと判断した」

局長が引き受けてきた責任の大きさと学校教育に与えた影響を考えると、局長の言葉は身勝手な言い訳だ。

髙橋局長がスポーツ庁次長だった2017年4月に設立されたスポーツ・コンプライアンス教育振興機構(SPOCOM)は、翌5月に同庁の「スポーツ界のコンプライアンス強化事業」に採択された。谷口被告は同機構の監事に就任していた。6月29日に同機構の発足記念会が開催され、その夜の懇親会に、川端被告を介して国会議員からの出席要請があるとの理由で、髙橋局長が参加することになった。懇親会は都内の飲食店で開かれ、髙橋局長、川端被告、谷口被告の他、同庁参事官や現職の国会議員らが参加。店は当日、貸し切り状態だったという。黒いネットワークは確実に広がり、そして深くなっていた。

スポーツのコンプライアンス強化を図る目的の事業に関連して重大なコンプライアンス違反があったとする調査結果は何とも皮肉だ。髙橋局長は利害関係者から少なくとも2万円程度の供応接待を受け、同席した同庁参事官の管理監督責任を問われた。省の調査によれば、髙橋局長と谷口被告との供応接待はこの時の一度きりであったとされるが、利害関係者であることが明らかな人物からの供応接待を受けていたという点で、他に処分を受けた幹部職員よりも問題は深刻だ。

教育新聞ではこれまでに昨年8月と今年5月の2回、髙橋局長にインタビューをしている。インタビューに応じる局長は温和で実直だった。直近のインタビューでは「文科省としては働き方改革を政策の中心に据え、先生方が余裕を持って学び続けられるような環境をつくらなければならないと思っている。全国の教委とも連携しながら、予算面、制度面の対応も含め、先生方をしっかりとバックアップできるように取り組んでいきたい」と語っていた。国家公務員倫理規定違反は初中局長になる前の出来事とはいえ、子供たちの教育を支える大黒柱が文部科学行政の信用を失墜させていたとは、よもや考えたくもない。

省の再建を議論するために8月に立ち上がった省内タスクフォースには、若手職員らを中心に約150人が志願したという。新たに設置される文科大臣直属の「文科省創生実行本部」は、タスクフォースでの省再建の議論を踏まえ、年内をめどに再発防止策や信頼回復に向けた方針を出すことになっている。林芳正文科大臣は高橋局長らの懲戒処分を発表した9月21日の記者会見で、現時点での自らの辞任は否定し、汚職事件の調査・検証をやり遂げる意向を示した。天下り問題で省が揺れていた時期は、贈賄側の黒いネットワークが浸食していた時期とも重なる。天下りの発覚から今回の事務次官引責辞職までの1年8カ月を文科省史上最悪の時期と捉え、全職員は一連の不祥事を記憶と記録に刻み込まなければならない。省の「創生」は、その先にしかない。

(藤井孝良)

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