脳より教え方が大切 スイスの研究者らが講演

今井むつみ慶應大学教授が主催する研究会「ABLE」はこのほど、東京都中央区の内田洋行東京本社で「脳科学と教育」をテーマに講演会を開催した。参加した識者たちは、脳科学の知見を安易に教育に持ち込もうとする風潮に疑問を呈した。

講演会には、スイス連邦工科大学のエルスベス・スターン教授とラルフ・シューマッハー博士が登壇した。2人は批判的思考力を育むことを目標とした科学・数学教育のカリキュラムを提案し、その実践と検証をするプロジェクトをスイス全土で展開している。

スターン教授は冒頭、「脳科学の研究者は教育に口を出したがる」と指摘した上で、日本がPISA(学習到達度調査)ランキングで高い位置にあることに触れ「日本人の子供の脳がいいからではなく、先生の教え方がいいからだろう」と述べた。

シューマッハー博士は、学びのメカニズムを全て脳科学で説明しようとする風潮に疑問を投げ掛け、「脳の機能に還元して語れるはずがない」と指摘した。さらに、脳の機能だけに着目せず、学習方法や知識の習得法を教える必要性を訴えた。

今井教授は2人の議論を受け、「脳の話題はメタファーで単純化して話せるため、『わかっちゃった感』が出しやすい」と述べ、「子供のつまずきを解きほぐせる『いい先生』は、脳のことを熟知していなくても教えられる。子供は、目には見えない現象を理解するために勉強する必要がある。大切なのは、学習の前提となる知識があるかないかだ」と話した。