働き方改革に教育学者は 呼び掛け人、広田教授に聞く

中教審の学校における働き方改革特別部会に対し、給特法の見直しや年単位の変形労働時間制の導入見直しを求めている「学校の働き方を考える教育学者の会」の呼び掛け人の一人である広田照幸・日本大学教授(日本教育学会会長)が12月4日、給特法改正の署名活動を展開している斉藤ひでみ氏(仮名)との文科、厚労両省への署名提出に先立ち、教育新聞の単独取材に応じた。学校の働き方改革の議論が大詰めを迎える今、教育学の視点からこの問題をどのように捉えているのか。教育学者の会を立ち上げた理由を聞いた。

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――「学校の働き方改革を考える教育学者の会」を立ち上げた理由は。

中教審で教員の働き方改革が議論されているが、必ずしも抜本的な改革の方向が出されていない。本質的な事態の改善につながらない議論がされているのが大きな問題だ。1971年に制定された給特法で想定している教員の働き方が維持できなくなっているのが現状だ。教員の勤務の実情と合わなくなっている以上、抜本的な改革が必要だ。

今日は現職教員の斉藤氏が勇気を持って署名を呼び掛け、その署名を文科省や厚労省に提出するので、この問題を一緒に広く訴えたいと思っている。

――広田教授から見た給特法の問題は。
教育新聞へのインタビューに応じた広田教授=12月4日正午すぎ、都内、藤井孝良撮影

66年の勤務実態調査を基にして4%という教職調整額が設定されたわけだが、そのプロセス自体に問題があったと思っている。当初は教員の超過勤務に対して手当を付けるということで議論が進んでいた。ところが、さまざまな情勢の中で最終的には超過勤務に手当を払うのではなく、教職調整額という形で決着してしまった。結果的にその決着がその後、大きな問題を生み、今に至っていると言える。

85年に臨教審が個性重視の原則をうたうようになると、一人一人の子供に向き合うような学校づくりが進んだ。個々の子供の問題に対処したり、個別指導したり、一人一人の子供に考えさせる授業をしたりと、次々に学校への要求が高まる一方、教員を増やすなどの抜本的な改善がされないままだったので、学校現場のやるべきことが増え、長時間労働を招いた。給特法の制定当初に考えられていたのとは圧倒的に異なる量の、無給の残業が発生する事態になっている。給特法が作った枠組みではもう持たなくなっている。

――教育学者として、給特法や教員の長時間労働に対して行動する意義は。

教育学者が教員に対し「こんなに教育は素晴らしいから頑張れ」と追い詰めた部分があることには、個人的には責任を感じる。教育学者が関心を持ってきたのは、いかに何をどう教えるかという教育の在り方だった。しかし、教員の勤務条件や生活時間がきちんと確保できないような状況が明らかになり、次々に打ち出される改革が教員を追い詰めていることがはっきりしてきた。教室で何をどう教えるかということに教育学者は関心を持つけれど、その外側の大きな問題を解決しないと、教員がこれ以上持たなくなっているということだ。これからは教員の勤務条件に学者が発言していくことが重要になっていくだろう。

学会でもシンポジウムや課題研究など、近年教員の働き方の問題を研究で取り上げるようになっており、強い関心が寄せられている。ただ、社会的なアクションを起こすという議論はあまり広がっていない。学会は学術研究団体なので、どこまで社会的に行動すべきかについては議論がある。

――学校はブラックであるというイメージから、学生が教員を志望しなくなっているという声もあるが。

個別に聞くこともあるが、全体的にどうかは分からない。ただ、学生にはきちんと法令を学んで、勤務条件がどういうルールで作られているのかは理解するように伝えている。私の場合は給特法も授業で教えている。公立学校の教員はいくら働いても残業代が出ないということを知っていなければ困る。

――教員へのメッセージを。

中教審での議論を今後も注視していく。抜本的な改革の方針が示されない限り、事態の改善を訴え続けていきたい。学校現場は目の前の無定量で無限定な残業状態を仕方がないものと考えずにきちんと声を上げてほしい。改善できるところは改善を求めていってほしい。

(聞き手:藤井孝良)