考える野球で決勝進出 都立小山台高校の哲学

21世紀枠で甲子園に出場した記念碑

東京都立小山台高校(大田原弘幸校長、生徒960人)の「硬式野球班」は、限られた環境と時間を有効に生かす練習で、昨夏の第100回全国高校野球選手権・東東京大会では、強豪校がひしめき合う中、決勝に進出した。福嶋正信監督は「1に生活、2に学業、3に野球で甲子園」が合言葉。班員に学業と生活を意識させながら、考える野球の実践で技術を高めている。

■生活の中に野球あり

小山台高校の硬式野球班は、第86回選抜高校野球大会の21世紀枠で班創立以来初めて甲子園のグラウンドに立った。同校の校門脇には、同大会への出場を記念し「生活の中に野球あり、野球の中に人生あり」と記した石碑が立つ。福嶋監督は、この言葉を重視した練習で好成績を実現してきた。

現在の班員は91人。レギュラーメンバーのAチームをはじめ、BとCの計3チームで構成する。福嶋監督は2005年に監督に就任。これまで赴任した各都立高校でも野球部監督を歴任し、全国高校野球選手権・東東京大会の準優勝をはじめ、ベスト8進出も何度も果たしている。

小山台高校の練習環境や時間は十分ではない。週6日の練習の中心は、学校の90×60メートルのグラウンドだ。他班と掛け持ちしながら、1日平均1.5~2時間の練習に取り組む。週1回はプロ野球巨人軍がかつて使用していた旧多摩川グラウンドでの練習も入るが、校内で野球の練習だけに専念できる環境や設備は乏しい。

「1に生活、2に学業、3に野球で甲子園」という福嶋正信監督
■野球日誌で質の高い練習を実現

そんな逆境を克服する手段の一つとして、福嶋監督は班内で「野球日誌」を実践。全班員に野球への思いや練習方法、人生の問い掛けなどを記録させている。記録は班内で互いに発表し合い、研さんとチームの結束力強化につなげている。

日誌の文量や内容は班員たちで話し合いながら自ら決定する。現在、班員は毎日、1人1ページ分の記録をつづる。「青春を野球にささげる」と題した日誌には、勉強やトレーニングの時間割が詳細に記され、日々の生活の切り替えがしっかり行えるようになった点を自己評価した内容が書かれている。「この生活を続けていれば、必ず良いことが待っていると信じている」との記述もある。

06年にシンドラー社のエレベーターによる事故で亡くなった班員が日誌に残した言葉も、班で継承されている。その言葉は「エブリデイ・マイ・ラスト」。毎日を精いっぱい生きる重要性と決意を示しており、練習や試合に取り組む上での哲学にもなっている。

福嶋監督は「野球日誌は、一人一人の部員の考え工夫する力を生み出し、限られた環境や時間を有効利用するための創造力を高めている」と指摘。同班の強さである「ゲームを決して諦めないプレースタイルにも結実している」と打ち明けた。