学びたくても学べなかった ニーズに応える「教育×ICT」

フィギュアスケート・紀平梨花選手(同校ホームページより)

フィギュアスケートのグランプリファイナルを初出場で制覇した紀平梨花選手、囲碁棋士の広瀬優一・二段、女流棋聖の上野愛咲美・二段、関航太郎・二段、eスポーツ「ウイニングイレブン」で優勝した相原翼選手――。5人の共通点はN高校で学んでいること。N高は2016年に開校したドワンゴ系列の学校で、ICTを活用し好きな時間・場所で授業に参加でき、3年間で高卒資格を取得できる。

紀平選手はN高を選んだ理由を「スケートと両立できる学校がなかなかない中、隙間の時間を有効活用して勉強できるのでスケートに集中できる」と語る。

上木原孝伸副校長は「紀平選手は『高校での学習内容をきちんと身に付けたい』と入学し、今も遠征や練習で多忙な合間を縫って熱心に学んでいる」と説明する。

同校は、肢体不自由などで通学困難な生徒に代わり、遠隔操作ロボット「Beam」が出席する取り組みを進めている。他の生徒とコミュニケーションを取ったりグループワークに参加したりする仕組みをつくり、通学が困難な生徒が、教育とICTの融合で学びの機会を得ている。

「特進コース」では、塾通いが難しい地域に住む生徒が現役で東京工業大などの国立大に合格したケースがある。

■ICTの可能性

上木原副校長は教員採用試験で不合格となったのを機に、塾産業へ。ドワンゴが開発したアプリ「N予備校」を見て、「最高の授業はプロがICTで届けると感じた」と話す。

「ティーチングはICTに任せて、教員はコーチングに注力すべきだ」――。そう考えて、N高の設立に参画。教員の持ち時間数を削減し、生徒一人一人に向き合う時間を確保した。

■PBLに着手

当初は通信コースのみとしていたが、生徒から「通学したい」という声が多く寄せられた。そこで考えたのは「通わないとできない探究型学習」。「プロジェクトN」と名付けた毎日2時間のPBL(Project-Based Learning)が始まった。

重視するのは実社会を題材に課題を考え、解決策を見いだすこと。18年11月からは「政策の二面性」をテーマに約3分のオリジナルドラマを制作させた。

ドラマ制作の発表会に出席した「未来の教室」プラットフォームを統括する経産省商務サービスグループ・浅野大介教育産業室長は、全国のN高生とオンラインでつながる中、「課題を把握して政策を考え、良い面・悪い面を広い視野で想像する。それができるようになれば、どんな仕事にも通じる力になる」と述べ、「この取り組みをモデルに探究学習が広がるといい」と言葉に力を込めた。