外国人児童生徒への対応 世界の公立校を経験した女性が見る日本の教育

これからのダイバーシティ教育を考えるに当たって、今後さらに増加が予想される外国人児童生徒への対応は重視せざるを得ない。外国人児童生徒数は、ここ数年で急速に増加。文科省が2016年度に実施した「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況に関する調査」によれば、公立学校で日本語指導が必要な児童生徒数(外国籍、日本国籍)は、10年間で1.7倍に増えている。多様なバックグラウンドを持つ児童生徒と学び合う教育を考える――。

■外国人児童生徒への対応は各国さまざま

文科省の同調査では、日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数は14年度の前回調査と比較して17.6ポイント増の3万4335人。日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒は同21.7ポイント増の9612人と、近年急増した。母語もポルトガル語、中国語、フィリピノ語など多様化している。

公立小・中学校に日本語指導が必要な児童生徒が在籍する学校数は、9890校。そのうち、1校当たり4人以下の在籍校が79.4%を占めるが、5人以上在籍している学校も2034校あり、集住化と散在化、両方の傾向が見られる。

世界では、こうした外国人児童生徒の受け入れにどう対応しているのか。小~中学生の間に、世界6カ国の公立学校で教育を受けてきたコピーライターのキリーロバ・ナージャさんに聞いた。

世界6カ国の教育を受けたキリーロバ・ナージャさん

ナージャさんは「米国では、どの年齢でも外国人児童生徒にはESLという第二外国語としての英語特別クラスが用意されていて、ネーティブレベルになるまで面倒をみてくれる。英語ができないことをネガティブに捉えられることはなかったし、その子がしゃべれる言語や文化を尊重してくれている印象があった」と話す。

仏の小学校では、外国籍の児童をまとめたクラスがあり、さまざまな学年の児童が一緒に学んでいた。「自宅から通学できる範囲でいくつか学校が選べたので、そうしたクラスがある現地校を選んだ」。1年前後をこのクラスで過ごし、フランス語が話せるようになれば、各学年の通常クラスに移動する方式だった。

英国で通った小学校では、「私以外にも他国から来た児童がいたが、米国や仏のように、言語に関する特別なクラスは設けられていなかった。だが、元々どんな授業でも5~6人のグループになった座席で常にグループワークをするので、コミュニケーションの量はかなり多い。そのため、自然と早く語学が習得できた」と振り返る。

■高校受験が高いハードルに

日本でも14年度から「特別の教育課程」としての編成や実施が可能となり、この制度を導入して日本語指導をする小・中学校も増えている。DLA(外国人児童生徒の日本語能力測定方法)の実施に伴い日本語レベルを把握し、見通しを立てた指導計画の作成が定着しつつある。

一方、16年度の「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況に関する調査」からは、日本語指導の方法が分からなかったり、教材が無かったりするために、日本語指導など特別の指導や放課後の教科の補習ができていない学校が1434校、同様の理由で「特別の教育課程」による日本語指導ができていない学校が2202校あることが分かっている。

今後さらに、日本語指導などを担当する教員には専門性の向上が求められるとともに、教員養成や研修の必要も迫られている。

ナージャさんは「日本は世界と比較しても、独特の教育文化が多い。言語もそうだが、日本独特の文化やルールも保護者や児童生徒に伝えてほしい。文化が分かれば、できることがたくさんある」とアドバイスする。

来日時の年齢によって、日本語の習熟度や学力の付き方に差が出ている点も課題として挙げられる。

ナージャさんも「日本独特の『高校受験』というシステムは、外国人児童生徒にとって、かなり高いハードルだと感じた」と打ち明ける。「小学生の間ならば、1年ほどで言葉も自然と習得でき、授業にも付いていける。だが、中学3年生の途中で日本に再来日したときは、同学年で日本は世界と比べて勉強がかなり進んでいて、難しいと感じた」と言う。

例えば、数学が得意でも、問題が読めなかったり、日本的な答え方が分からなかったりして誤答になる。歴史でも「シーザー」は誤答で「カエサル」が正解だという。本当は解ける能力があるのに答え方が分からなかったり、正解なのに間違いになったりすると、学習のモチベーションは下がってしまう。

ナージャさんは「中学生以降に来日した生徒には、さらに手厚いフォローが必要だと思う」と強調する。

■いろいろなやり方を認めるべき

ナージャさんは、毎年のように違う国の学校に転校し、違う言語を習得しながらその国の教育を受けてきた。外国人児童生徒が求める対応を聞くと、「例えば米国のESLでは、先生が私の好きそうな分野の本を渡してくれた。英語ができなくても興味のある分野の本だと楽しみながら読めたし、英語を習得する大きなきっかけとなった」と言う。「スポーツが好きな子だったら、スポーツをやらせてたくさんコミュニケーションを取ることで覚えられるだろう」。

単に「あいうえお」を書けるようにするのではなく、児童生徒が何か一つでも自信の持てるものを発見したり、与えたりできれば、言葉ができなくても能力を広げることができる。

ナージャさんは「日本は一つの決まったやり方でないと、認めてもらえない。語学の指導は当然必要だが、学びの中でいろいろなやり方や多様性が認められると、さまざまな国のバックグラウンドを持つ児童生徒も活躍できるのではないか」と指摘する。


(編集部注)各国の学校教育事情は、ナージャさんが通学していた1990年代当時のもので、現在は異なる場合もある。