学校でのLGBT教育を考える

認定NPO法人ReBit教育事業部マネージャー 三戸 花菜子(寄稿)

■「違い」について考える
子供たちに性の多様性を説く筆者(ReBit提供)

ReBit(リビット)は、LGBTを含めた全ての子供がありのままで大人になれる社会を目指す認定NPO法人だ。主に大学生や20代の若者たちが、多様な性を切り口に、「違い」について考える授業を小・中・高校で年間150回ほど実施している。

LGBTとは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(体の性と自認する性が異なる人)の四つの言葉の頭文字を合わせた言葉だ。昨今ではセクシュアルマイノリティー(性的少数者)を指す言葉として使われている。

LGBTの子供はいじめや自殺のハイリスク層でありながら、多様な性に関する正しい情報やポジティブな情報に十分に触れられていない現状がある。

■8割の中学生が知らないLGBT

リビットでは、多様な性をテーマにした中学校教員向けの道徳教材「Ally Teacher’s Tool Kit」を作成している。

この教材を使用する前の中学生1152人にアンケートしたところ、「同性愛や性同一性障害などについて、どのくらい知っているか」という質問に、80%以上が「聞いたことがない」「聞いたことはあるが、具体的には知らない」と回答した。一方で「セクシュアルマイノリティーについて、授業や学校で習ったことはあるか」という質問に、「ある」と答えた中学生は10%にとどまった。

セクシュアリティーは、単に性や恋愛の話だけではなく、進路や就職、パートナー、老後など、人生設計に深く関わるアイデンティティーの一部だ。だからこそ、多様な性の正しい情報は、子供たちがこれからの人生を安心して生きていける情報と言える。

リビットの出張授業後のアンケートで、「多様な性についての話は自分にも関わりがあることだ」と回答したのは、中学生で75%、高校生で90%に上った。多様な性について知ることはLGBT当事者の子供にとっても、当事者以外の子供にとっても、これからの生き方を考える一助になるのではないか。

■皆が「自分ごと」として考える学びを

では、どのように授業を展開すればよいのだろうか。

岡山県倉敷市教委では人権教育の一環として、多様な性について授業を実践し、資料をホームページ上で公開している。神奈川県教委は人権学習ワークシート集を作成し、ホームページ上で配布している。

「Ally Teacher’s Tool Kit」を使った教員のアンケートでは、「道徳」で活用した教員が半数、次いで「総合的な学習の時間」「保健体育」という結果だった。

自身の経験を元に授業するスタッフも(ReBit提供)

多様な性について伝える際に私たちが大切にしているのは、授業の場だけではなく、日常生活から伝えていくこと。そして、全ての子供に「自分ごと」として課題に向き合ってもらうことだ。

セクシュアリティーは見た目だけでは判断できない。体の性と自認する性が一致しない人や、同性に好意を抱く人が身近にいると気付かないこともあるだろう。「身近にいるかもしれない」と思えないからこそ、子供自身がセクシュアルマイノリティーであると自認したときに、自分を肯定できない恐れがある。

だからこそ、授業の時間だけではなく日常生活から「性の在り方は多様で、異性愛者だけではない」「体の性と自認する性が一致しない人もいる」「何かあったら相談しても大丈夫」というメッセージを届けてほしい。

■日常的に伝え続けること

「LGBT」に焦点を合わせる授業をしてしまうと、「特別な人たちを受け入れなければいけない」とハードルが高くなりがちだ。そうではない。LGBTの当事者かどうか関係なく、皆一人一人、性の在り方が異なるということを伝えなければならない。自分自身も多様な性に関わる一人であるのだ。

1回きりの授業で、考えや価値観が全て変わることは決してない。日常的に伝え続けることが大切だ。日頃から、たくさんの「違い」を持つ子供たちと接している教員だからこそ、多様な性に関しても学びと安心を届けられるだろう。