韓国の教員らが都内小を視察 授業に大きな拍手

韓国の教員らが視察した公開授業=1月25日午前9時30分、東京都北区、小松亜由子撮影

「子供たちの思考力が深まるのを感じた。日本の先生方は子供が授業に対して熱心に取り組むようになるにはどうしたらいいか懸命に考え、工夫している」――。韓国の小学校教員ら約40人が1月25日、東京都北区立王子第五小学校(岩切洋一校長、児童204人)を訪れ、国語の授業を視察した。

視察団のリーダーは、学習指導のスキルや方法を研究する韓国の民間団体「松光授業技術研究所」の韓炯植(ハン・ヒョンシク)所長で、韓所長が元小学校教諭・向山洋一氏の著者に感銘を受けたことがきっかけで、向山氏が代表を務める教育技術の研究・普及を図るNPO法人「TOSS」が協力し視察が実現した。

視察団を前に研究授業を行ったのは、来年度から都内公立小学校の教諭になる、東京家政大学4年生の五十嵐薫子さん。王子第五小学校は複数の大学と連携して教員志望者の育成に当たっており、五十嵐さんは岩切校長や再任用教員らの指導で実践経験を重ねている。

授業で、五十嵐さんは「ありがとう」と題した詩を示し、児童全員に音読させた。詩には文房具や靴、扇風機があることへの感謝がつづられており、五十嵐さんが書き手の気持ちを尋ねると、児童は「勉強や運動ができてうれしい」「暑くないので楽に過ごせる」と答えた。

ここで五十嵐さんは隠していた最後の3行を示した。「最後に おじいちゃん見つけてくれてありがとう さよならすることができました」――。五十嵐さんは、書き手が小学生だった2011年に東日本大震災で津波被害を受けたことを明かし、自ら撮影した写真をスライドで見せながら震災について説明した。

日本の教育の現状について講演する向山行雄・敬愛大学教職センター長=1月25日午前11時10分、東京都板橋区、小松亜由子撮影

その上で書き手の気持ちを想像するよう促すと、児童らの意見は大きく変わった。一人の男子は「自分にとって書ききれないくらい大きな存在だったおじいちゃんが死んでしまって、書き手の『僕』は何もできなくて罪悪感でいっぱいだ」と語った。続いて、改めて音読した児童らは、真剣な表情で書き手の気持ちをくみ取ろうとしていた。

五十嵐さんが「書いた人が伝えたかったことや背景を考えるようにすると、音読はもっと意味のあるものになる」とまとめると、視察団から大きな拍手が送られた。中には涙をぬぐう教員もいた。

その後、向山氏の弟で、元全国連合小学校長会会長の向山行雄・敬愛大学教職センター長が「日本の教育の現状と課題」をテーマに講演。20年度から教育改革が本格的に始まる一方で、教員の多忙さや、OECD諸国の中で教育投資が最も低い国の一つであることを課題として伝え、抜本的な変革が急務だと語った。