新教科「てつがく」で深い学びへ お茶女附属小で研究会

「一つの考えにこだわらない」「人の意見を聞く」「問いは広がる」――。お茶の水女子大学附属小学校(東京都文京区、池田全之校長)が創設した新教科「てつがく」の授業で、「てつがくするってなに?」という問いかけに4年生の児童が出した意見の一部だ。

同校は2015年度から文科省の研究開発指定を受け「学びをひらく ―ともに『てつがくする』子どもと教師―」を主題に、「てつがくすること」を中核とした教育課程の編成と授業実践に取り組んできた。18年度は研究開発最終年度で、2月21、22の両日、第81回の教育実際指導研究会を開き、「てつがく」などの授業公開や協議会、講演が実施された。

同校が作成した「てつがく」学習指導要領によれば、教科の目標は「民主的な社会を支える市民の一員として、創造的によりよく生きるために主体的に思考し、前向きに他者と関わり行動する姿勢を育む」こと。「対話」や「記述」を通して互いの考えを聴き合い、自ら問い直して考え続ける学びを展開する。3年生以上で週1コマとし、朝の時間も含めて年間55時間を確保している。

初日の3年生の公開授業では、国語の授業で読んだ『おにたのぼうし』(あまんきみこ作)を踏まえ、「鬼はなぜ悪者扱いされるのか」「『おにた』はなぜ、鬼を嫌う人間を助けるのか」という疑問から発展した「自分のことを分かってくれない人のことを助けられるか」という問いについて、クラス全員がサークル対話の形式で話し合った。

児童が考えを話し、他の児童がその根拠や背景を尋ねながら傾聴する中、担当する藤枝真奈教諭は対話の内容について確認や整頓をして考えを深めるよう働き掛け、最後に「まとめて言うと」と投げ掛けて振り返りを促した。

授業後の話し合いでは、参加した教員が「具体的な生活体験から出発して抽象的な思考が導かれていた」と評価。板書をしない理由を尋ねられると、藤枝教諭は「校内でも議論になった」とした上で、「板書には記憶につながる利点があるが、児童はノートに写す方に集中するあまり、思考の妨げになってしまう」と述べた。「最後に振り返らせることで哲学対話のまとめを促している」と語った。

話し合い後の課題別協議会では、「てつがく」構想部会のコメンテーターを務めた上智大学総合人間科学部の奈須正裕教授が、「哲学対話では、思いがけない自分との出会いがある。話しながら自分の考えに驚く姿を何度も見た」と語り、「それが哲学対話の醍醐味(だいごみ)。立ち止まって考え、吟味し、必要があれば更新する。これが自己の生き方の更新をもたらす」と締めくくった。

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