「特性は強み」 インクルーシブ教育でトークセッション

講演する文科省初中局特別支援教育課の田中裕一調査官

「特別支援教育の視点を生かした通常学級の授業づくり・学級づくり」と題したシンポジウムが2月23日、都内で開催された。中央教育研究所主催。新学習指導要領で示されたインクルーシブ教育の実現に向け、今後求められる授業改革と学級経営について、文科省、研究者、現場教員がトークセッションを行った。教員ら約200人が参加した。

セッションに先立ち行政説明をした、文科省初中局特別支援教育課の田中裕一調査官は、新学習指導要領における特別支援教育のポイントは「どのように学ぶか」だと強調。「アクティブ・ラーニングという用語が注目されがちだが、それよりも重要なのは学習過程。身に付けた知識・理解を実際の生活場面で活用できるよう、子供の学び方を工夫してほしい」と訴えた。

トークセッションには、田中調査官のほか、東京学芸大学総合教育科学系の奥住秀之教授、東京都公立小学校の田中博司主幹教諭が登壇。

通常学級に特別支援教育の視点を取り入れる上で重要なこととして、田中調査官は「一人一人の特性を強みとして生かす支援が教員に求められる」と語り、奥住教授も「弱いところに焦点が当たりがちになるが、集中が途切れやすいところは『さまざまなことに興味がある』、不器用で時間がかかるところは『物事に丁寧に取り組む』などと捉えることができる」とコメントした。

また田中主幹教諭は、子供の強みを発見・活用する手法としてハーバード大学の心理学者ガードナーが提唱する「マルチ知能理論」を紹介。これは、従来の知能検査では言語的知能や論理数学的知能といったごく一部の能力しか測定されず、人間の知能を狭く捉えすぎていたとして、人間がもつ力を「言語的知能」「空間的知能」「身体運動的知能」「音楽的知能」など八つに分類し、さまざまな特性に対応しようというもの。この理論に従えば子供の強みをより多面的に評価でき、その強みに合った学習方法を示すことができると語った。

特別支援教育の視点から授業・学級づくりを話し合う登壇者ら

奥住教授が補足として、子供の強みを発見する有効な手段には▽アセスメントを通じて個人内の様相を把握する▽保護者やスクールカウンセラーなど複数の人から話を聞く▽問答法を通じて本人から引き出す――などがあるとした上で、「その強みを学級など集団で発揮し、共に学ぶ仲間が認めるよう教員が働き掛けることも重要だ」と強調。

これを受けて田中主幹教諭は「子供が集団の中で違いを認識し、互いに認め合うことは共生社会の形成に欠かせない。その意味で、多様な子供が共に学ぶ通常学級の役割は大きい」と語り、田中調査官は「今日のシンポジウムはオープンエンド。新たな取り組みをすぐに始めるのは難しいが、他の教員に伝えるなどの『半歩踏み出す勇気』をもってほしい」と呼び掛けた。