Society5.0時代の教育とは? 中教審諮問詳報

柴山昌彦文科相は4月17日、第123回中央教育審議会(中教審)総会で、未来社会(Society5.0)に対応した「新しい時代の初等中等教育の在り方について」を諮問した。

ICT時代の初等中等教育について審議をスタートさせた中教審の委員ら

諮問では、初等中等教育について、国際的にみても高水準の教育が行われているとの現状認識を示したうえで、社会の急激な変化とともに顕在化してきた課題を列挙し、Society5.0時代の教育・学校・教師のあり方について、目指すべき方向性を提起している。そのうえで、具体的な諮問項目として(1)新時代の義務教育のあり方(2)新時代に対応した高等学校教育のあり方(3)増加する外国人児童生徒などへの教育のあり方(4)これからの時代に応じた教師のあり方や教育環境の整備など――の四つのテーマをあげた。

中教審に対する諮問の詳細は次の通り。

新しい時代の初等中等教育のあり方について
【現在の学校教育の成果の例】
〇OECD・PISA2015で15歳の子供たちは、数学的リテラシーや科学的リテラシーがOECD加盟国中1位など、世界トップレベルの学力水準
〇全国学力・学習状況調査において、成績下位の都道府県の平均正答率と全国の平均正答率の差が縮小するなど学力の全体的な底上げが確実に進展
〇高校の多様化が進み、大学や産業界などとの連携の下でさまざまな教育や、地域社会の課題解決に大きく貢献する活動が展開
〇知・徳・体を一体で育む「日本型学校教育」は学力水準を高め、社会性を育んできた。それを支えたのは、子供たちの教育に志を持つ教師の献身的な取り組みである。
【社会の急激な変化とともに、次のような課題も顕在化】
〇児童生徒の語彙(ごい)力や読解力に課題
〇高校生の学習時間減少や学習意欲の希薄化
〇大学受験に最低限必要な科目以外を真剣に学ぶ動機の低下
〇いじめの重大事態や児童虐待相談対応件数が過去最多、障害のある児童生徒、不登校児童生徒、外国人児童生徒などの増加
〇教師は小学校月約59時間、中学校月約81時間の時間外勤務(2016年度の教員勤務実態調査)
〇教師の採用選考試験の競争率減少、とりわけ小学校採用試験の倍率の急落(2000年度12.5倍→2017年度3.5倍)
〇学校のICT環境は脆弱(ぜいじゃく)であり、地域間格差も大きいなど危機的状況
〇人口減少、少子高齢化の進展により、一市町村一小学校一中学校等の自治体が増加
【Society5.0時代の教育・学校・教師のあり方】
〇Society5.0時代には、(1)読解力や情報活用能力(2)教科固有の見方・考え方を働かせて自分の頭で考えて表現する能力(3)対話や協働を通じて知識やアイデアを共有し新しい解や納得解を生み出す力などが必要
〇教師を支援するツールとして先端技術を活用し、(1)地理的制約を超えた多様な他者との協働的な学び(2)一人ひとりの能力、適性などに応じた学び(3)子供たちの意欲を高めやりたいことを深められる学びを実現
〇子供たちの学びの変化に応じた資質・能力を有する教師、多様性があり、変化にも柔軟に対応できる教師集団
〇「チームとしての学校」の推進

Society5.0時代の到来を見据え、初等中等教育の現状及び課題を踏まえ、「新学習指導要領の実施」や「学校における働き方改革」といった、これからの初等中等教育のあり方について総合的に検討する。

中央教育審議会において審議をお願いしたい事項
1.新時代に対応した義務教育のあり方
〇基礎的読解力などの基盤的な学力の確実な定着に向けた方策
〇義務教育9年間を見通した児童生徒の発達の段階に応じた学級担任制と教科担任制のあり方や、習熟度別指導のあり方など今後の指導体制のあり方
〇年間授業時数や標準的な授業時間などのあり方を含む教育課程のあり方
2.新時代に対応した高等学校教育のあり方
〇普通科改革など各学科のあり方
〇文系・理系にかかわらずさまざまな科目を学ぶことや、STEAM教育の推進
〇時代の変化・役割の変化に応じた定時制・通信制課程のあり方
〇地域社会や高等教育機関との協働による教育のあり方
3.増加する外国人児童生徒などへの教育のあり方
〇外国人児童生徒などの就学機会の確保、教育相談などの包括的支援のあり方
〇公立学校における外国人児童生徒などに対する指導体制の確保
〇日本の生活や文化に関する教育、母語の指導、異文化理解や多文化共生の考え方に基づく教育のあり方
4.これからの時代に応じた教師のあり方や教育環境の整備など
〇児童生徒などに求められる資質・能力を育成することができる教師のあり方
〇義務教育9年間を学級担任制を重視する段階と教科担任制を重視する段階にとらえ直すことのできる教職員配置や教育免許制度のあり方
〇教員養成・免許・採用・研修・勤務環境・人事計画などのあり方
〇免許更新講習と研修などの位置付けのあり方など教員免許更新制の実質化
〇多様な背景を持つ人材によって教職員組織を構成できるようにするための免許制度や教員の養成・採用・研修・勤務環境のあり方
〇特別な配慮を要する児童生徒などへの指導など特定の課題に関する教師の専門性向上のための仕組みの構築
〇幼児教育の無償化を踏まえた幼児教育の質の向上
〇義務教育をすべての児童生徒などに実質的に保障するための方策
〇いじめの重大事態、虐待事案に適切に対応するための方策
〇学校の小規模化を踏まえた自治体間の連携などを含めた学校運営のあり方
〇教職員や専門的人材の配置、ICT環境や先端技術の活用を含む条件整備のあり方