小中高で微生物や病原体の基礎知識を 日本学術会議が提言

初等中等教育で微生物や病原体の基礎知識を教えていないため、感染症が流行したときなどに社会活動に支障が出る恐れがあるとして、日本学術会議基礎医学委員会病原体学分科会は5月20日、小中高で微生物や病原体の基礎知識を身に付けられるよう、一貫性のあるカリキュラムの策定を求めた提言「我が国における微生物・病原体に関するリテラシー教育」を公表した。

同提言では、微生物は地球環境の保全やヒトの食生活に不可欠な要素で、新規の産業イノベーションの創出にも極めて有用である一方、微生物の中の病原体が社会不安を引き起こす感染症の流行を繰り返したことを踏まえ、微生物教育の必要性を強調した。

しかしながら、現状の初等中等教育における微生物教育は著しく不十分で、「重篤な感染症の流行が起きた場合に、不正確なマスコミ報道や無責任なSNSなどによる不確実な情報の拡散により、平時の社会活動に支障をきたすことが想定される」と憂慮した。

その上で現在の学校教育について、「微生物概念及び感染症(病原体)への基本的な対応に関する教育の欠如と、教育者の知識あるいは能力の不足を認める」と厳しく評価し、「微生物教育の中で必要な情報を提供して、従来の考え方を根本から改めるべき時期に来ている」と指摘した。

続いて、小中高それぞれの段階に応じて、微生物教育の具体的な対処法を提案した。

小学校では、微生物に関する包括的な記述、感染症の予防に関する基本的な事項に関する記述を拡充し、ICTを活用しながら小学生に興味を抱かせることを求めた。

中学校では、微生物を、ヒトと微生物、食品・医薬品・酵素・アミノ酸などの製造に貢献する微小の生物、疾病を引き起こす病原体という観点で記載し、人類の存続のために微生物の理解が重要であることを正しく述べ、幅広い理解を促す。

感染症の原因とその予防、エイズおよび性感染症の予防について十分な時間をとって授業を実施するよう徹底させ、他の重大感染症も取り上げることで感染症の全体像を描けるように導く、とした。

高校では、生物学の一つのジャンルとして微生物学を取り上げ、地球環境保全における微生物の役割や、食品・医薬品・酵素・アミノ酸などの製造と「発酵」現象の理解も含めた、包括的視点からの教育内容を含むようにする。

同時にリテラシー教育の観点から、感染症からいかに身を守るかなどの実践的な課題解決能力を養うことを促した。