当事者意識が必要 東大五月祭で新時代の教育を議論

新時代に求められる人物像をテーマに、学生と有識者が語り合う「ROJE五月祭教育フォーラム2019」が5月19日、東京大学本郷キャンパスで開かれた。慶應義塾大学の中村伊知哉教授、東京都千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長らが登壇し、パネルディスカッションでは教育の明日を巡る白熱した議論が交わされた。本郷キャンパスの会場には900人を超える参加者が詰めかけ、メモを取るなどしながら熱心に聞き入っていた。

白熱する議論に900人超の聴衆が沸いた

「つくるひとになろう」と題して講演した中村教授は、ITとAIが中心となって働く社会を「超ヒマ社会」と展望。こうした時代を生き抜いていくには「つくる」ことと「楽しむ」ことが必要だと述べた。

来年開学予定で中村氏が校長に就任予定の「i専門職大学」にも触れ、「これからは国家間ではなく都市間の競争になる。世界で最も創造的な都市である東京で、オンライン中心の、企業で学んで企業と『つくる』学校にする。100社を超える有力企業との産学連携プロジェクトを構想していて、学生には在学中に必ず一度は起業させる」と意欲的に語った。

工藤校長は「学校教育の本質から問い直す」の題で講演。

同中学でのさまざまな改革を「麹町中だからできるのではないか」という声もあると明かした上で、「当事者意識がなく人の批判ばかりして惰性で動いている大人が多い。皆考えることをやめてしまっているのではないか。日本はペーパーテストの点を上げるためだけに勉強時間を増やそうとしているが、それに本当に意味はあるのか」と疑問を呈した。

さらに「年度初めの抱負や、誰も読まない作文を書かせるような『手段の目的化』が横行している。他者に伝える意識がないものが学びになるはずはない。読解力が大事というが、伝えようとする言葉が伝わるかどうか吟味する力の方が大事」と強調。

「私がやってきたのは、学校に関わる全ての人々を当事者に変え、対話を通して目的の合意形成を図り手段を決定するということだけ。対話をし続けなければ学校は変わらない」と述べた。

パネルディスカッションでは両氏に加え、教育者の陰山英男氏、鈴木寛東京大/慶應義塾大教授、主催団体であるNPO法人日本教育再興連盟の椎名愛さんが登壇し、新時代の教育の在り方について議論した。

鈴木教授はOECDが示す学習者に身に付けさせるべき力(キーコンピテンシー)について、「炎上をエンジョイできるマインドではないか。違和感と出合ったときにジタバタせずに向き合うということ。危機は『危険』と『機会』を併せ持ったものだと捉えられる感性が必要」と述べた。

また陰山氏は学校現場の働き方改革にも言及し、「実際は定年退職の2~3倍の教員が中途退職している。そうした事実が知られないまま表面的な問題だけ議論されていて、実態と乖離(かいり)しているのではないかという危惧がある」と問題提起した。