授業中の集中度を計測 脳科学とEdTechの実証実験

授業中の生徒と教師の脳活動をリアルタイムで計測し、生徒の集中度やICT機器の学習支援効果を可視化する実証実験が5月27日、神奈川県横須賀市の三浦学苑高校(吉田和市校長、生徒数1299人)で公開された。

携帯型脳活動計測装置を装着して授業がスタート

この技術は、血流量の微細な変化をとらえて脳活動を計測し、最大40人分のデータをモニター画面に表示するもの。生徒一人一人が課題にどの程度集中しているか瞬時に把握できるため、教師が授業を進めながら課題の出し方を改善したり、生徒が自分の状態を知って効率的な学習に役立てたりすることができる。

この実証実験は「EdTechと認知科学・脳科学を融合させたテーラーメイド学習支援技術」と名付けられ、東京大学大学院総合文化研究科の開(ひらき)一夫教授が中心となって、今年度から4年間かけて取り組んでいる。

EdTechと脳科学を組み合わせた実証実験が行われるのは、世界的にも例がないという。

1年10組の教室で行われたデモンストレーション授業では、まず、生徒たちが白いヘアバンドのような携帯型脳活動計測装置を装着。約30秒かけて気持ちを落ち着かせ、平静状態をつくり出した。

脳活動が活発になると、酸素の消費が増えて血流量が増える。測定装置は、記憶や思考をつかさどる前頭前野の血流量が、起点となる平静状態に比べ、どのくらい増えたかを近赤外光によって計測する仕組み。モニター画面では、平静状態の青色から、血流量が増えるに従って緑色→黄色→赤色と変化し、生徒一人一人の測定結果が一覧で表示される。

生徒の集中度を示す画面。リラックスした状態の青で始まり、緑、黄、赤と色が変化して集中の度合いを表示する

デモンストレーション授業は現代社会で、生徒たちは1人1台のタブレット端末を使いながら参加した。担当の野櫻慎二主幹教諭が日本国憲法の国民主権について課題を出すと、生徒たちの脳活動が始まり、モニター画面には青色の表示が次々と緑色、黄色、赤色へと変化していった。

測定装置は、野櫻教諭の頭部にも装着されている。生徒と教師の脳活動を計測することで、例えば、コミュニケーションが必要な場面では、生徒と教師双方の脳活動が活発になっていると、両者のコミュニケーションがうまくとれていることを示す指標になるという。

また、授業ではタブレット端末を使って生徒間で参考情報のやりとりなどが常時行われており、こうしたICT機器の学習支援効果がどの程度上がっているのかについても、生徒の脳活動を計測することで可視化できる。

授業を受けた生徒は「勉強しているときの自分の状態が分かれば、効率的に勉強できると思います」(内田優さん)、「先生に脳の中まで知られてしまうのは、ちょっと抵抗がありました。でも、自分がどこに集中しているか分かるのは面白い」(三浦渚さん)などと話していた。

実証実験を行った開一夫・東京大学大学院総合文化研究科教授(中央)ら

教壇に立った野櫻教諭は、計測装置を使った授業は今回で3回目。その効果について、「生徒一人一人に対して、声をかける方法を変えられる。新聞を読みながら一人で思考するときに深く考える生徒がいるかと思えば、発表の時に脳を活性化させる生徒もいる。そうした生徒一人一人のタイプの違いを分かった上で教えることができるのは、大きな意味があると思う」と話していた。

実証実験を主導する開教授は「教育にICTを活用すると言っても、タブレットを配っただけでは、学力は向上しないし、先生に時間の余裕は生まれない。どうやって新しいテクノロジーと新しい学びを結びつけるのか、大きな課題だ。こうした測定技術を生かしていけば、生徒一人一人の理解度に応じたテーラーメイドの学習支援が可能になり、国際的なAI時代に求められる人材の育成にもつながるだろう」と話している。