「世界水準の事例」OECD局長 埼玉県学力検査を絶賛

6月4日に東京都文京区の東京大学で開かれた国際シンポジウム「教育を科学する」(ベネッセコーポレーション主催)では、日本の教育委員会や学校現場で取り組まれているエビデンスに基づいた教育について報告があった。OECD教育・スキル局長のアンドレアス・シュライヒャー局長は、埼玉県が独自に取り組む「埼玉県学力・学習状況調査」について、「ワールドクラスの優れた事例だ」と絶賛した。

教育現場でのエビデンスについて議論したパネルディスカッション

埼玉県では、2015年度からさいたま市を除く埼玉県内の公立小・中学校の小学4年生から中学3年生を対象に、小学校は国語、算数、中学校は国語、数学、英語で学力調査を実施している。同一の児童生徒の変化を継続的に把握している上に、項目反応理論(IRT)によって出題する全ての問題に同一の尺度で難易度を設定しているため、個人や学校ごとの学力の伸びを測ることが可能となった。

調査の分析から、教師がアクティブ・ラーニングや落ち着いた学級づくりなどに取り組むことで、子供の非認知能力や学習方略を改善させることが分かった。同県では児童生徒に「学習支援カルテ」や「復習支援シート」などを提供し、個別の学習改善につなげているほか、学校向けに好事例やアクティブ・ラーニングの授業モデルを作成し、指導力向上につなげている。

取り組みを報告した埼玉県教育局市町村支援部の八田聡史義務教育指導課長は「埼玉県の学力調査はまだ開発途中の段階だ。OECDをはじめ、さまざまなステークホルダーとの連携を進めていきたい」と述べた。

報告を受け、パネリストの益川弘如聖心女子大学教授は「埼玉県の取り組みは授業をよりよくするサイクルになっている。結果を見て、現場の教師には変えていかなければいけないという意識が高まっている」と評価した上で、「このデータをどう生かすかで悩んでいる教師もいる。これからの教育に関心の高い教師にとっては改善につながっているが、そうでない教師の場合には、単にドリル学習の強化などにつながってしまわないか心配だ。点数を上げる改善だけをやると、より大きなコンピテンシーの育成にはつながらない」と指摘した。

シュライヒャー局長は「埼玉県はワールドクラスの優れた事例だ。IRTはパフォーマンスの進化を追いかけられる点で伝統的な試験とは違う。埼玉県では、子供が成功するように、社会情動的な側面を分析している点も素晴らしい。ビッグデータを活用してリポートを現場に返しているのもよい」と高く評価。そのうえで、「もう一歩先に進めて、教師がデータサイエンティストとなり、生のデータを分析していってはどうか」と提案した。