異質なアイデアを尊重する教育制度を 成長戦略実行計画

政府は6月5日の未来投資会議で、70歳までの雇用確保を企業の努力規定とする法改正や、「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業が競争を妨げないように規制を強める法整備などを盛り込んだ成長戦略実行計画案を取りまとめた。教育関連では、付加価値の高い雇用の創出に向け、機械やAIでは代替できない人間の能力として創造性・感性・デザイン性・企画力を挙げ、そうした能力を持つ人材を育成するために、さまざまな発想や異質なアイデアを尊重する教育制度を整備していくように求めた。

安倍晋三首相は会議の席上、「成長戦略こそアベノミクスのエンジンだ。第四次産業革命とも言うべき急激な変革の時代にあって、人や資金が柔軟に動けるよう、これまでの発想にとらわれない大胆な発想の改革をスピーディーに取り組めるようにしなければならない」と述べた。

成長戦略実行計画は、AI、IoT、ロボット、ビッグデータ、分散台帳技術(ブロックチェーン)などデジタル技術とデータの活用による第4次産業革命が急速に進む中、生産性向上や経済成長を目指して、日本が今後1、2年間で法制面を含めて整備すべき内容について、①Society5.0の実現②全世代型社会保障への改革③人口減少下での地方施策の強化--の項目に分けて取りまとめた。与党で協議した上、近く閣議決定を行い、予算措置が必要なものは来年度予算の概算要求に盛り込み、法改正が必要なものは2020年通常国会での成立を図る。

教育関連では、経済成長を支える原動力は「人」だと位置付け、「個人が組織に縛られ過ぎず、自由に個性を発揮しながら、付加価値の高い仕事ができる、新たな価値創造社会を実現する必要がある」と明記。そのうえで、「創造性、感性、デザイン性、企画力といった機械やAIでは代替できない人間の能力が付加価値を生み出す」として、教育制度においても「さまざまな発想や異質なアイデアを尊重することで、それぞれの領域で抜きんでた才能を有する人材を育成する必要がある」と、今後の制度設計の方向性を示した。

また、第4次産業革命の進展により、米国で大学院卒の賃金にプレミアムが発生している事態に注目。修士卒・博士卒の賃金プレミアムは、心理学・芸術・コミュニケーション・文学・物理学といった基礎的本質的な分野に発生しており、「AIと組み合わせたとき、基礎的な部分が問題になる」と分析した。このため、日本でも「文理を問わず、大学院教育を含めリベラルアーツ教育の強化を進める必要がある」と、AI時代に対応する高等教育の在り方を方向付けた。

それぞれの項目では、Society5.0の実現として、▽GAFAなど巨大IT企業によるプラットフォームビジネスが公正な競争を妨げないように規制し、取り引き慣行の透明性や公平性を確保する規制措置の立法化を含めたデジタル市場のルール整備▽フィンテック・金融分野として銀行送金以外の幅広い送金を可能とする決済分野の横断化▽自家用車による有償旅客運送やタクシーの相乗りを可能とする制度や通達の整備――などを挙げた。

全世代型社会保障への改革では、70歳までの就業機会を確保するため、企業が▽定年廃止▽70歳までの定年延長▽継続雇用制度の導入▽個人とのフリーランス契約への資金提供▽個人の起業支援▽個人の社会貢献活動参加への資金提供--ができるように法整備を進める。その第1段階として、70歳までの雇用確保を企業の努力規定とする法改正を2020年通常国会を行い、第2段階では70歳までの雇用確保を企業に義務化する。年金支給年齢の引き上げは行わず、支給開始時期の繰り下げ期間を現行の70歳から拡大する。また、疾病や介護の予防に向け、生活習慣病の重症化予防などに保険者努力支援制度を導入する。

人口減少下での地方施策の強化では、人口減が進む地方で経営が悪化している路線バス事業者や地域銀行について、独占禁止法のカルテル規制を時限措置として緩和して合併や共同運営を進めて利益を確保し、バス路線網や地域企業への資金供給網を維持することが盛り込まれた。