芸術教科の役割に注目 資質・能力の育成で 中教審部会

中教審教育課程部会は6月10日、来年度から順次予定されている新学習指導要領の全面実施を着実に進めるための議論をスタートさせた。この日は、Society5.0時代に向けて必要とされる児童生徒の資質・能力の育成に対し、美術や音楽などの芸術教科が果たす役割に注目し、研究者や教育現場から報告が行われた。

芸術教科の役割について報告を受けた中教審教育課程部会

この日は教育課程部会として第10期の第1回会合となることから、冒頭、部会長に天笠茂・千葉大学特任教授、副部会長に荒瀬克己・大谷大学教授と市川伸一・東京大学大学院教授が選任された。続いて、新学習指導要領に関連する教材整備指針や保護者や一般に対する広報PR活動について文科省が報告、了承された。

芸術教科については、学校における芸術教育の充実を目的に、2018年10月に所管官庁がこれまでの文科省から文化庁に移管された。新学習指導要領の下では、豊かな感性や創造性を育み、実社会での課題解決につながる資質・能力の育成を目指し、文化庁に新設された学校芸術教育室が芸術系教科を扱う。

この日の部会では、こうした資質・能力の育成につながる芸術教科について、4人の識者が報告した。福本謹一・元兵庫教育大学教授は、テクノロジーと芸術の関連性や世界各国の動向など、美術教育の社会的役割に対する期待が拡大している状況を説明。田中健次・茨城大学名誉教授は、世界各国と日本の音楽教育を比較しながら、国際化やSTEM化が問われる現代こそ、言語と同様に民族特有のものが大切だとの考えを示した。

中学校で音楽科の実践を続けてきた埼玉大学教育学部附属中学校の佐藤太一副校長は、平安時代に発展した雅楽を聞いて違和感を持った生徒が、拍のずれが現代のポップスと違うことを理解し、だんだん自分なりの価値観を見いだしていく過程を説明。また、ジャズの即興演奏の実演を通じて、生徒が協働して創造する力をつけていく実例を報告した。

また、京都市立西京極西小学校の中下美華校長は、図画工作科の授業で、児童が作品を「つくり、つくりかえ、またつくる」過程を通じて、つくりだす喜びを知ったり、友達と関わり合いながら作品をつくることで互いに学びを含めていったりする姿を説明。こうした芸術系教科を通じて、児童が自己肯定感を高め、友達を肯定できるようになっていく様子を描いた。

出席した委員からは「芸術教育は今までの日本に欠けていたところ。教師が資質・能力の育成に取り組む姿勢が変わることが期待できる」「児童生徒の自己肯定感が高まることは大切だ」といった肯定的な意見が出た。

一方、「音楽を通じて自分の言葉で話すことを学んだら、それを生かして他教科でも自分の言葉で話せるようになる力が必要になる。そういうカリキュラム・マネジメントを専門教員がいないところでできるのか。先生の研修が必要だ」「芸術教育は、音楽や美術を包括した総合芸術としての教育が必要になる。芸術教科のなかでまず包括的な総合芸術を目指すべきではないのか」といった課題の指摘もあった。

また、新学習指導要領の着実な実施が課題となる中、「世の中がすごい速度で変わる中、学校への期待が非常に高まっている。その期待に現場がどう応えていくのか。離島もあるような地方で、その期待に応えられる人材をきちんと確保できるのか」と不安視する声もあった。

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