【TALIS2018】長時間勤務に強みも OECD局長

日本の教員は世界一の長時間労働で、自信も満足感も希薄――。国際教員指導環境調査(TALIS)によって浮かび上がった姿は、日本の教育現場に多くの課題を示唆する内容となった。

東京とロンドンを結んで会見するOECDのアンドレアス・シュライヒャー教育スキル局長

調査を取りまとめたOECD(経済協力開発機構)のアンドレアス・シュライヒャー教育スキル局長は、インターネット経由で日本人記者団と会見し、「長時間労働は日本の教員の強みでもあり、弱みでもある。日本では教員と生徒のつながりが強く、それが日本の子供たちの幸福という意味では、良い結果につながっている。日本の教員はとても良い仕事をしていると考えてほしい」との見解を明らかにした。

シュライヒャー局長は、教員の勤務時間が世界一長いことについて、「日本の教員の労働時間は極めて長いが、授業や指導に使っている時間はOECDの平均より若干下回っている。他の国と違うのは、教室以外の場所でたくさん責任を負わされていることではないか。生徒に対する個別指導、クラブ活動、親とのやりとり、行政的な事務など、授業以外の仕事が大変だ。一方で、OECD平均と比べて、授業研究に掛けている時間も長い」と分析。

こうした現状について「教師が忙しすぎ、負担が大きいのは弱みかもしれない。けれども、教室の中で教える以外にも、生徒と深く交流する機会をたくさん持てていることは、日本の先生の強みだ。教え子の人間性をきちんと知り、強い絆を構築することができる」と述べ、日本の教師の長時間労働には短所だけではなく、長所もあることを強調した。

シュライヒャー局長は「こうした教育を実践するために、教員の負担が大きいことは間違いない。だが、日本の子供は学業成績が高いという結果がある。日本の教師が社会に貢献できていることは明らかだ」と述べ、日本の教員の働き方を高く評価した。

さらに日本の対極にある例として米国を挙げ、「米国の教員の勤務時間は日本よりも短いけれども、実際に生徒を指導している時間は日本よりも長い。米国の教員は、授業以外に生徒と接触する時間が極めて限られているということだ。他の教員と能力向上について話す時間や、職能開発に参加する時間も極めて限られている。結果として、米国の子供の学業成績は、それほど高いとは言えない」と述べた。

特別支援などで課題となっている分業については、英国の例を挙げた。「英国は、極めて分業体制が発達していて、教員は授業で教えることしかしない。それ以外の子供たちが抱える課題については、学校に児童心理司を置いたり、特別なニーズのある子供たちにはソーシャルワーカーや専門の教員が対応したり、部活動には別の教員が対応したりしている。さまざまな機能を持った人たちが一緒に学校で仕事をしているが、どの教員もうまくいっていないと感じている。なぜなら、子供の人間性を全体として見るひとがいないからだ。こうした分業は、一見合理的に見えるが、必ずしもそうでもない」と指摘。日本の教員が子供と深いつながりを持っている、と評価した。

こうした海外との比較を踏まえ、日本国内で課題となっている働き方改革の方向性について、シュライヒャー局長は「先生の事務的な作業負担を減らす努力が必要だ。教員の仕事は子供たちと直接やりとりがある仕事や、教員同士の作業に集中させるべきではないか。そうすることによって、いまの日本の強みを維持しながら、あまりにも長すぎる労働時間の課題も乗り越えることができるだろう」と説明した。

また、中期的な課題としては、教員の待遇改善を挙げた。「相対的に日本の教員の給料は下がってきている。教職に就くことは、知的なだけではなく、収入としても魅力のある職業であり続けなければいけない。日本はこれまで、比較的優秀な人たちが教員を目指してきたが、今後も続く保証はない。人材の獲得競争が激しくなる中で、若い人たちが教員になりたいと思えるようにすることが、日本にとって大切だ」と述べ、教員の質を確保することが重要との見方を示した。

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